虹の賢者
□はじまり・青の賢者編
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そこはまだ海賊たちが生きていた時代。
すべては、ある晴れた日に響き渡る悲鳴から始まった。ちいさな港町が海賊達に襲われていたのだった。
「おら!金目のものはすべて出せ!!」
しばらく暴れてた海賊達はひきあげた。
荒くれたちに襲われたちいさな港町はひとたまりもなかった。海賊達に切られてケガを負った人たちが、命を絶たれたもの達が往来に横たわっていた。
残された者たちは片付けにおわれることとなった。
そんな街にふたたび船が近づいてきた。
「海賊船か?」
誰に言うでもなく町長は独り言を言っていた。
しかしその船は海賊船にはかならずあるものがなかった。そう、あのドクロマークのある黒い旗だ。
「海賊船ではなさそうだ。」
町長がそう判断したときには、船は桟橋についていた。そして10人くらいの乗組員たちが次々と陸へおりていた。
「ようこそ、旅のおかた。すまんが街はゴチャゴチャしておる」
「かまわないさ。ちょいと3日ほど泊めてくれ。」
町長は宿屋へと旅人をつれていった。船から降りた人だけで貸し切り状態になるほどちいさな宿屋だった。
「まぁ、たまには陸で寝るのもいいか…」
「船長… おれ街の人手伝ってきます。」
「あぁ、そうしてやれ。この街の男たちは減っているからな…」
船長は宿の窓から見ながら答えた。
男は宿から出て、木の柱にはさまれてた少女を助け出した。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとうお兄ちゃん…」
「親の居場所はわかるか?」
「… ふぇっ、ふぇ〜ん!!」
少女は泣き始めてしまった。困った男は少女を抱きしめ、それまでのいきさつを訊いた。途切れ途切れに少女は答えていった。
どうやら、さきほど海賊に襲われて両親とはぐれてしまったらしい。
「泣くな。おれが探してやるよ。お前名前は?おれはニコラスっていうんだ。」
「ひくっ… ディアナ…」
「んじゃ、ディアナ探すぞ!!」
「うん、ニコラス兄ちゃん!!」
少女はもう泣いていなかった。よっぽどニコラスが頼もしく見えたのか、ぴったりとくっついてはなれなかった。
「… にしてもひどいやりかただな… こんなちいさな街から略奪するなんて」
ニコラスは怒りを覚えて、幼いころの記憶を少し思い出していた。
しばらく街を歩き、片付けを手伝いながらディアナの親を探し続けた。
家が崩れたのだろうか、がれきの山を横切ろうとしたとき、かすかに声が聞こえたようだった。
「? 誰かいるのか?」
「… 助け… て…」
「がれきの下敷きになってるのか?」
ニコラスは声のでどころをつきとめようとしていた。
「どこら辺にいるんだ?」
「こ… ここ…」
「… 悪ぃ、ここじゃわかんねぇ…」
「たす… けて…」
途切れ途切れに男女の声が聞こえる。
「ママ!!パパ!!」
ディアナは叫んでいた。
どうやらがれきの下に両親はいるようだ。
「今助けるから、もう少しがまんしてくれ。」
ニコラスはがれきをどかし始めた。ディアナも手伝いたいのか、ニコラスの側にいた。
「… 手伝いたいのか?」
「うん...」
「うぅ〜ん、力仕事だからなぁ〜…」
ディアナは手伝えないように感じ少し落ち込んだ。悩みながらニコラスは頭をかいた。
「んじゃぁ、声をかけて励ましてやれ。そうすれば場所もわかるし」
「うん!!」
ディアナは明るく答えて、声をかけ始めた。