虹の賢者
□はじまり・赤の賢者編
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まだ騎士達がいた時代。
とある街の往来に一本の剣が倒れていた。
いや、正確にいえば自分の背丈ほどの剣を背負った少女が赤い石につまずき、転んでいたのだ。
「いたた… 誰よ!こんなところに石を置いたやつは!!」
少女はしぶしぶたちあがった、自分のつまずいた石をみながら。
「きれいな石ね… 宝石かな?」
少女はその石を拾い、自分の道具入れの中にいれていた。
「えへっ。もらいっ!落ちてたあんたが悪い!!」
服のほこりをはたきながらまた歩き始めた。
その少女は見たところ10歳くらいの、長い金の髪を後ろでたばねていた。
その長い髪の間から見える剣はかなり古いもののように見えた。
「おう!オーシャンじゃないか!!」
剣を背負った少女に男は言った。
「おっちゃん!見て見て!!きれいな石を拾ったよ!!」
少女、オーシャンは拾った石を男に見せた。
「まさか、盗賊から奪い取った石じゃねぇだろうな!?」
「賞金のかかってない奴からは取らないわよ!」
「って、かかってたら取るのか?」
「もちろんよ!!」
オーシャンは得意げに答えた。
この少女は名の通った賞金稼ぎのオーシャン・ランドであった。
「まあいいや。俺には価値があるかどうかはわからねぇ。俺の専門は果物だからな!ほれ、りんごでも食っとけ。」
「ありがとう、おっちゃん!」
オーシャンは石をしまい、もらったりんごを食べながら男の店を去った。
しばらく行くと、いくつかの気配がオーシャン自身の歩調と重なっていた。
_誰かにつけられている?
そう感じたオーシャンはすこし早足で歩いた。
ついてくる気配も足を速めた。
_何よ。命を狙われる覚えはないわ。
どうやらこの少女、自分が賞金稼ぎであることを自覚してないようだ。
オーシャンは足を止めた。
「つけてきてるのはわかってるんだから!あきらめて出てきなさい!!」
しばらく反応はなかった。
オーシャンの声に驚いた通行人が行き交う通り。
「あのぉ〜、大声出して待ってるだけは嫌何だけどぉ〜」
言い終わるより早く、気配が動いた。
異変を感じたオーシャンはその場を横に飛んだ。
ついさっきまでいた所には、矢が刺さっていた。
「危ないじゃないのよ!矢を射るときには一言いいなさいよ!!」
「言ったら奇襲の意味がねぇだろ!!」
見当はずれのことを言ってるオーシャンに腹を立てたのか、どう見ても盗賊の様な風貌をそなえた男たちが現れた。
「先日はよくも親分を倒してくれたな。礼を言うぜ。」
「お礼を言うんだったらもっと心臓にやさしい登場しなさいよ。」
「それもそうだな。おかげで俺が頭になれたわけだし…」
「ならいいじゃない、あたしには関係ないわ。おめでとう」
オーシャンはお祝いの言葉を言ってその場を逃げようとしていた。
が…
「ありがとう… じゃなくて!!お前が親分から奪ったメダルがあっただろ!?それを渡せ!!」
「めだる?」
オーシャンは首をかしげていた。
身に覚えがまったくなかったからだ。
「ねぇ、なんのことかさっぱりわかんないんだけど…」
「っじゃぁ身体にきくまでだ!!」
盗賊たちがオーシャンを襲い始めた。
盗賊たちの拳が、短剣が、蹴りが交差する中するなか、オーシャンは身軽に攻撃を避けていた。
しかし、オーシャンは背負ってた剣を使おうともせず素手で構えていた。
ひとりのパンチを上手くかわしながらオーシャンは相手のふところに飛び込んでいた。
「だから、あんたたちに狙われる覚えはないわ!!」
オーシャンは叫びながらその男にアッパーを食らわしていた。
「あっ!!兄貴!!おのれ、よくも兄貴を!!」
「だから、身に覚えのないことで攻撃される筋合いはないわ!!」
言いながらその弟分と思われる男を蹴っ倒していた。
しばらく戦っていく中、盗賊の親分は考えてオーシャンにひとつの質問をした。
「じゃ、聞かせてもらうが...お前は“嘆きの森”に行ったことはあるか?」
「そんな物騒なとこには行かないわ。」
親分は攻撃を止めるように言った。
「どうやらこいつは本当に知らないようだ…」
「あんたたち!さっきからそう言ってるでしょ!!」
「むだな体力使わせやがって…」
「それはこっちのセリフよ!本当にはったおすわよ。」
「人違いとわかったからひきあげるぞ、てめぇら!」
盗賊たちは、早々と逃げ去っていた。
あとに残されたオーシャンは、盗賊たちの立ち去った後に立ち上る砂ぼこりを見ながら呆然と立っていた。
「なんだったの?あいつら…」