ナルサス部屋

□かぜひき
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「……?」

いつの間に眠ってしまったのか、ベッドの中で目覚めたナルトは首を傾げた。

「あ…そうだってばよ」

任務終わった後、今日の修業はどうする?と話している内に、サスケが不機嫌になったのだ。

よくわからないが、サスケに風邪だと言われた。

「風邪って、咳とか出るやつだろ?オレってば咳なんて出てないってばよ?」

「てめぇはバカか」

「はあ?バカとはなんだよ」

くってかかったナルトを無視して、強引にアパートまでやってきたサスケにハメられて丸薬を飲んだ。

「あれから寝ちまったのか…」

じゃあ、ベッドまで運んでくれたのはサスケか?という疑問がわく。

もぞもぞと寝返りを打てば、チラリと青い背中が目に入った。

硬質な絹を闇色に染めたような艶色の髪が、微かに揺れている。

「?…起きたか?」

キッチンに向かっていたサスケは、動いた気配に気づいたのか、ふり返って言葉を続けた。

「何か食えるか?」

「あー。…れ?」

腹は減っているハズなのに、何となく食欲がない。

それに、頭がくらくらする。

「だから、風邪だっつったんだ」

「咳…出ねぇのに?」

「風邪にも種類があるだろ。知らねぇのか?」

呆れたような声音に反論しようにも、ふらつく頭で思考を纏めるのは無理だった。

「少し食え。それから薬だ。反論は受け付けねぇぞ」
「ん…」

「ほら、食えるか?」

差し出されたお椀の中には、どろっとした白いものが入っていた。

「?」

「お前ん家、何もないのな。とりあえず粥らしきもの作ってみたけど」

言われるままに、スプーンで中身を掬ってみる。

「ん……。お?」

一口含んだそれは、見た目のマズさを払拭するような美味しさだった。

「美味い。…これ何?」

驚いて見やれば、はにかむような顔のサスケに出会う。

「ミルク粥ってやつだ。米がねぇからパンを小さくして牛乳で煮詰めてみた。砂糖も入れたから、お前には食いやすいだろ?」

「美味いってばよ」

その砂糖の甘さがまた絶妙で、ナルトは暫し幸福感に浸った。

「食えるなら食え。薬を飲むには食わなきゃならねぇんだから」

「ん…」

言われるままに、ナルトはスプーンを口に運んだ。










素直に言うことを聞いて食べるナルトを、サスケは困ったように見つめていた。

いつもような勢いのないナルトに、調子が狂う。

けれど、相手は病人なのだと思えば、口出ししたくなる。

「ほら、薬も飲め」

「ん」

「水も全部飲めよ」

「ん」

「ほら、もう寝ろ」

「ん」

「次に起きた時は、汗かいてるハズだから着替えるからな」

「ん」

それに…。

自分の言うことに素直に従うナルトの世話をするのは、何となく楽しかったりする。

「―――サスケ…」

「?」

「あんがと」

「…」

そう言って再び目を閉じたナルトを、サスケは無言で見やった。

「…………っ」

頬が一気に熱くなる。

絶対赤面しているであろう自分を自覚して、サスケはくるりと反転した。

〔ナルトが寝ちまっててよかったー〕

ナルトの言葉で赤面する自分など、絶対見られたくない。

「あー。んったくもう」

視界に入ったキッチンには、ミルク粥を作った片手鍋があった。

食欲がない時のことを考えて、ナルトの好きそうな甘めにして正解だったと思う。

何度も「美味い」と言われれば、悪い気はしない。

あんな簡単なもので喜ぶのだから、日常の食生活は知れたものだ。

〔もう少しマシなものでも作ってやるかな〕

そう思いつつ、ナルトが起きた時の準備をし始めるサスケだった。









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