ナルサス部屋
□ホットミルク
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最初にナルトにホットミルクを作ってやったのは、まだスリーマンセルを組み始めた頃だったと思う。
風邪をひいたらしいナルトを、不本意ながら看病してやった時に作ってやったのが、ひどく気に入ったらしい。
それまで「牛乳は冷えたまま飲むもの」だったナルトには、温めた上に砂糖まで入れたホットミルクの存在は、画期的だったらしい。
作り方も簡単だし、胃にも優しいから、サスケは食欲のないナルトに請われるままに、何度か作ってやった記憶がある。
〔…何かあったな〕
いつの間にか常備するようになった牛乳を冷蔵庫から取り出しながら、サスケは居間にいるナルトの気配を窺う。
少しだけ疲れたような、それでいて哀しいようなチャクラが、細く滲み出ている。
九尾のチャクラをコントロールするくらいのナルトだ。
自分の感情からチャクラを乱すことなど、ありえない。
〔…いつもならな〕
それでも、自分といる時だけは、その感情をチャクラに滲ませることがある。
まあ、大概は見ていればわかる表情ではあるのだが、チャクラが加わると、よりいっそうわかりやすいというか…。
〔馬鹿だからな〕
内心の言葉に、サスケはくすり、と笑う。
〔だから、とっとと言やぁいいんだ。…らしくねぇ〕
そんなことを思いながら、ミルクパンに牛乳を注ぎ入れたサスケは、ふと気づく。
〔そういやぁ、牛乳を買い置きするようになったのも、ナルトの奴が家に上がり込むようになってからだな…〕
それまでのサスケは、特価でもない限り牛乳など買わなかった。
まあ、それも、里を抜ける前の話ではあるが。
一度は里を抜けて。
それから、還ってきた。
還ってきた、というか、
連れ戻された、というか、
泣き落とされた、というか、
駄々をこねられた、というか…。
帰ってきてやった、というか…。
甚だ微妙なところではあるが。
牛乳の常備に関していえば、帰郷後のことで。
その発端にナルトが絡んでいることは確かだと思うのだが。
如何せん。
いつからか、ということがサスケは思い出せずにいた。
〔まあ、いつからだろうと、構わねぇけど〕
ミルクパンの縁に小さく泡が立ってくると、サスケは火を弱くした。
それから何度かミルクパンを揺すって中の牛乳を回してから、火を止めた。
大振りの青いマグカップは、ナルト専用のもので。
そうと決めている自分と、
それを不思議に思わない自分に、
サスケは今更ながら笑ってしまう。
どれだけ、自分の中には
“うずまきナルト”
という存在が入り込んでしまっているのだろうと思う。
〔…ま、仕方ないか〕
諦めと、容認を含んだ自分の思考に、サスケは苦笑する。
ナルトに飲ませるホットミルクに入れる砂糖の量さえ、迷わないのだから、もう今更だ。
〔俺も大概だ〕
スプーンで二杯。
〔……〕
でも、少し考えて、もう一杯。
砂糖を入れると、そのスプーンを突っ込んだまま、サスケは居間へと向かった。