宝物殿

□We can't part each other (ナルサス)
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「……ナルト?」


麗しの勇名、うちはサスケから貴重な唖然とした声が出た。




【We can't part each other】




やっほ、サスケ。

そううずまきナルトの唇が動いた。本来、声帯が震え空気を伝ってこちらに進んでくるはずのうずまきナルトの優しいハスキーボイスはない。

眉間に皺を寄せ苦渋の心持ちを表したうちはサスケが、嫌そうに口を開いた。


「…サイか」


ひくり、とううちはサスケの問う、ではない断定の言葉にずまきナルトの右頬が引きつる。リアクションの有無を否定肯定の判断材料だとすれば、それは間違いなく肯定を意味している。

白い目を向けられたうずまきナルトが片手を立てた。


その軽い謝罪は明らかに現状に対して足りない。


しかし、それを確認したうちはサスケはあろうことかそのまま踵を返し、声が聴こえる範囲で少し離れたこちらへ歩んできた。少し、とはいえ忍同士の感覚なのだからそれなりにはある。


「ちょ、うちはさん!?」
「何でしょう」
「何処へ行かれるんですかうずまきさんへの確認は!?」


訝しげな顔をしたうちはサスケに失礼ですが、お話を聴かせて頂きましたよ、と続ける。
しかしそれでも通じないのか彼は何をです、と尋ねてきた。

忍界に於いて圧倒的な軍事力で影響力を保持する木の葉の代表格であるうちはサスケが心底解らない、と片眉を上げた。

忍等という血生臭い商売を生業とするには余りにも勿体無い美貌。しかし、その帯びた凄みは彼が忍であるが所以なのだろう。

何をって…、と逆に問い返されこちらが困惑してしまった。




うちはサスケとうずまきナルトの話は忍界に於いて有名だった。十年前に忍をやっていて知らない者はいないだろう、というぐらいには。

当時はどの里も異能者集団であった「暁」の尾獣狩りに揺れ動いた後で、元々九尾を抱えていたうずまきナルトは注目されていたのだ。彼らより代が下である自分には大した情報網も無かったため、詳細は知らないが。

何でも、彼らの戦場となった城趾には跡形も残らないほどの死闘を繰り広げたらしい。なんのゆかりもないここらあたりにまで話が流れている事実がその凄まじさを物語っていた。



とはいえ、不思議そうに依然として眉を上げたままのうちはサスケには、本当に思い当たるところがないらしい。


「いやだから、うずまきさん声が出ないんでしょ?」
「…ああ…」


ようやく合点がいったのだろううちはサスケは何故そんなことを聞くのか、という顔になった。


「…負傷の程度、という話ですか。それなら大丈夫ですよ、あれでも一応上忍ですから。何か支障をきたすなら言います。負傷といっても見たところ声が出ないくらいだ」


その声が出ないことが問題でしょう―…‥


そう思ったが露骨に眉を潜めるだけに留めた。彼の著名な「うちはサスケ」が度外視している理由を知りたくなったのだ。気にかけてすらいない。

まさか、声など出ずとも連携は取れる、とは言わないだろうが。

どうせ、彼らと自分は一時的に手を結んだだけだ。これが外交問題にまで発展するようなことがあれば由々しき事態だが、例え彼らが失敗したとしても自分が巧く立ち回れば良い。あくまで自分は「地理に疎い」彼らのサポートでしかない。


若手最強―…‥

そうまことしやかに囁かれている黄金コンビとやらの実力を確かめてやろう。
仲間への丁度いい土産話だ。守秘義務にかからない程度なら話してやれる。


自分は一切手を下さないことになっていた。


「では、手筈通りに」


そう言葉少なに告げたうちはサスケが黒髪を揺らし背を向けて去った。


 
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