宝物殿

□濡れる (ナルサス)
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【濡れる】
火影×補佐SSS




叩きつけるように降る雨。強さを増す風。
火影邸内の南西、長さ4間の縁側は吹き込む雨で濡れていた。陽はとうに姿を隠し、黒い雨雲が支配す
る外は降りしきる水が暗闇に線のように見えるだけだ。

その中で。

獣を唸りに似た声を上げたナルトに掻き抱かれ、サスケはその場に横たわらされた。
覆いかぶさるナルトの影で、密かに息を次ぐ。

吹き付ける雨粒は大きく、呼吸すらままならなかった。

思い出した古傷が疼き、呼吸ができなかった。

―――ああ、あの時と逆の構図だな…
サスケは緩やかな呼気を送り込んでくるナルトの唇を受け止めながら、思った。

失神したナルトを見下ろしていた、あの時。
殺そうと、思った。
殺してしまえるはずだった。
欲しかったのは、“力”
目の前の彼を殺して手に入れろ――――そう言われていた。

そうして手に入れられるものなら、手に入れていた。

できなかった。
どうしても、できなかった。

あの時、そうしてしまわなかったからこそ、今、こうして暖かい腕の中にいられる。

「少しは…楽になったか…」

サスケの額に、己のそれをつけてナルトが問う。
一つ、頷いて返せば、ゆっくりと圧し掛かられた。

濡れた衣服が水音を立てる。じわりとナルトの熱が伝わってくる。
首に回した腕を引き、彼の肩口に擦り寄った。
耳に、息を吹き込むように囁く。

「………服、気持ち悪いな…」
「ん…」
「……身体、冷えてきた……」
「…ん…」
「ナルト…?」

濡れてぺたりとした髪を鼻先でかき分け、耳朶を唇で食む。途端に、ナルトが喉奥で唸った。

誘ってんのか?と苦しげに訊くから…お前の好きに取ればいいと応えた。


水分をたっぷりと吸い込んだ生地は、なかなか身体からはがれない。
もどかしげに動いていたナルトの指先に、チャクラが集まるのを感じる。次の瞬間に布地は引き千切ら
れ、板の間にぼたりと落ちた。
水分に体温を取られていた肌に、熱い唇が吸い付く。吸い付いた唇よりも熱い舌が、肌をなぞる。

皮膚に触れるその感触が、強烈に脳内食い込んだ。

耐え難い快楽に床に爪をたてる。その手を掬い取られ、ナルトの背に回すよう促された。
雨と汗とにすべる肌。躊躇無く爪をたてる。
立てた爪で掻き毟ったとしても…傷は残らない。

もっと…つかまってて…

荒い息の合間に、ナルトに強請られる。
ひとことの中に含まれた、いろいろな意味と思いが判り彼の願いのまま、縋りついた。
揺さぶられ喘ぐ口に雨が入り込み、噎せる。

気付いた彼が、素早くけれどやさしく身体を反転させた。

四肢を支えに、背後からの激しい攻め立てに耐える。
雨の音にかき消され、自分の耳にすら届かないから、羞恥を感じることなく声を上げた。
自制も何も無いままに。

それは、サスケの中の何かを解放していくようで酷く心地良かった。






20070731
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