ナルサス部屋

□だってさぁ
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【だってさぁ】




だってさぁ。

何か、

ヤだったんだもん。

何て言うか、

やっぱ、

ヤだな、って、

思ったからさ。

だからさぁ。

何かさ…。






言い訳シリーズ2
〜だってさぁ










「あれ?」

いつものように修業に向かう途中、昨日まで広場に鎮座していたもみの木から飾りを取り外している光景を目にして、ナルトは思わず足を止めた。

「おっちゃん?それ、どーするんだってばよ?」

「あ?コレか。また来年まで仕舞っておくんだ」

「ふ〜ん」

段ボールに入れられていく星やカラフルなモールを見つめて、ナルトは再びもみの木を見上げた。

昨日までは、確かに“クリスマスツリー”だったそれは、今日からはただの“もみの木”になる。

いや、正確に言えば、戻るのだろう。

「じゃあ、この木も?」

「いや。こいつは棄てるよ。こんなでかい木は置き場所もないし、第一来年まで持たないからな」

「捨てる…」

「クリスマスツリーになった木なんか、薪以外に使い道もないしな」

「じゃあ、何で薪にはしないんだってば?」

「電飾代で予算オーバーしちまったから、薪割り代は出ないのさ」

「でもさ、薪にして売ったら、お金にはなるってばよ?」

当然のような疑問に、男はナルトを見て笑った。

「これから正月の準備に入るんだぜ?そんな暇はないんだな、これが」

「ふ〜ん」

イマイチ納得がいかないナルトは、再びもみの木を見やった。

「ボウズ、そんなに気になるのか?」

「う…ん…」

言葉を濁すナルトに、男は優しい眼差しを向ける。

子供は二種類だ。

クリスマスツリーがどうなるのか、気になる子と、全く気にならない子と。

「もう少し小さければ、ボウズにやったのにな」

「え?くれるってば?」

「だがなぁ、ボウズ。こんなでかいの、どうやって運ぶ?それに、家の人に怒られるだろ?」

「ぜーんぜん!オレってば一人だし、こんなの運べるってばよ!」

「え…?…お、おい、ボウズ?」

「影分身の術!」

言うが早いか、大量に現れたナルトの姿に、男は目を瞠った。

「じゃ、皆、やるってばよ!」

「「「「おー!」」」」

何人ものナルトは、立っていたもみの木を手際よく倒すと、うんせ、と肩に担ぎ上げる。

「じゃ、コレもらってくってばよ」

「ありがとー、おっちゃん!」

「またな〜」

口々に礼を言うナルトの後ろ姿を、呆然と見つめていた男だったが。

「ま、いっか。気ぃつけて帰れよ!」

遠ざかるもみの木と、オレンジ色の後ろ姿を、笑って見送ってやった。










「あーっと、どこに運ぶかなー」

男からもみの木を譲り受けた時点で、ナルトの心は修業の場でもある山へと向かっていた。

「ホントはさ、お前のいた所に帰してやりたいけど、わかんねぇしな」

肩に担ぎ上げたもみの木に、ナルトは語りかける。

「お前もさぁ。…折角ここまででかくなったのにな…」

クリスマスツリーに、丁度いいから。

それだけの理由で伐られて。

クリスマスが終わったから、もういらない。

「それって、何だかさぁ…ヤだよな」

独りごちてから、肩にある幹に耳を当ててみる。

ごおぉ、とも、ぶぉん、とも聞こえるような、音がする。

それは、耳で聴くのではなく、感覚で聴く、

“生命”の鼓動。

まだ、生きているもみの木が、幹内に水を運ぶ音。

「……そっか。じゃあ、オレが決めてもいいってば?」

ざわり、と揺れた緑の枝の音に微笑むと、ナルトは再び歩く速度を上げた。
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