ナルサス部屋
□泣いてるから
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【泣いてるから】
いつも
ケンカばかりだし。
イチイチ煩いし。
それでも、
たまに一緒にいる。
そんな奴が泣いてたら、
どうしていいか、
わからない。
調子が狂う。
でも…。
泣いてるから…。
言い訳シリーズ3
〜泣いてるから
ぼんやりと、もみの木にもたれ掛かりながら、サスケは空を見上げた。
木々の隙間から、薄い水色の空が見える。
火の国というだけあって、気候的には温暖だが、かといって師走も下旬となれば、肌寒さは免れない。
それなのに、こうしてぼんやりと座っているのは、偏に、隣で項垂れている金色頭のせいに他ならない。
「…」
こっそり窺い見た隣には、いつもの賑やかさはどこへやら。
どんよりと沈み込んだままのナルトが、ぐったりと倒れたもみの木の幹に抱きつくようにもたれ掛かっている。
〔…はぁ〕
しばらくはピクリとも動きそうにないナルトに、内心でため息をついてから、サスケはついさっきまでのことを思い出していた。
いつものように修業に向かう山中で、わらわらと動くモノを見た。
不審に思って樹上から見やれば、何やら木を担いだナルト(達)だった。
ナルト(達)が担いでいたのは、広場にクリスマスツリーとして飾ってあったもみの木で、どういう経緯か、廃棄されるそれをもらい受けたらしい。
何を物好きな、と思ったが、ナルトが「伐った木も生きているから」と言うので、その幹に耳を当ててみた。
その時の何とも言えない感覚は、サスケに“自然の強さ”を感じさせた。
だが、その一方で、ナルトには“終わる生命”を教えたらしい。
言葉や概念として知っていても、実際に体験しないとわからないこともある。
いろんな言葉を使っても、
“死”だけは、
体験しないとわからない類のものだ。
〔こいつは…知らないからな…〕
ナルトのことは、スリーマンセルを組む仲間だけれど、よくは知らない。
ただ、家族はいないようだし、最初から独りらしいことは、知っている。
だから、
“孤独”を知っていても、
“失う”ことを知らないのだと、思う。
〔…そんなもんだろうな〕
自分とて、あの忌まわしい事件がなければ、“孤独”も“失う”ことも知らなかっただろうし。
けれど…。
どうしたらいいのか、サスケは途方に暮れる。
サスケには、これといって仲の良い友達もいない。
むしろ、自分の目的のためには、邪魔なものだと思っている。
それは“友達”だけでなく“他人”という全般に抱いていることで。
だから当然のこと、人と接することは少ない。
その上で、他人を慰めるなど、皆無に近い。
けれど…。
スリーマンセルを組む中で。
任務を達成する中で。
どうしても無視できないこともある。
今は…。
訓練中でも、任務中でもないのだし、無視してしまえばいいのだろうが…。
それができない自分がいる。
それまでは、誰が何をしようと気にもしなかったのに…。
でも…。
見てしまったから。