ナルサス部屋

□つまみ食い
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【つまみ食い】




「サースーケ!」

ガチャリと開いたドアの向こうから、顔を覗かせたナルトを、サスケは呆れて見やった。

「お前なぁ、何度言ったらわかるんだ?そこは玄関じゃねぇ」

正しくは、勝手口というやつだ。

そんなサスケの言葉に、ナルトはむくれて言葉を続けた。

「だってよぉ、玄関から叫んだら、サスケ来んの遅ぇじゃん」

仮にも、木ノ葉の名門“うちは”一族の屋敷だ。

広くて当たり前。

当然のことながら、玄関への対応は多少のタイムラグが生まれてしまう。

「それに、こっちの方が楽だし」

ニシシ、とナルトが笑えば、サスケは再度呆れたように大きくため息を吐き出した。

「で、何の用だ」

「これ、もらったから、一緒に食おうってばよ」

無造作に差し出された茶色い紙袋を、

「何だ、それ?」

「銀杏だってばよ」

サスケは無意識に受け取った。

「銀杏?」

言われて開いた紙袋の中には、乳白色の小さな実が幾つも入っていた。

「だけどお前…。これって殻取るの大変だぞ?」

「大丈夫だってばよ」

「?」

「その紙袋のまま、レンジでチンすればいいんだってばよ」

銀杏を受け取った時にでも教えてもらったのだろう、ナルトは、ヘヘッ、と得意気に笑ってみせる。

「レンジで?」

「そうだってばよ。サスケん家、レンジあったよな?だから」

「…」

「いいだろ?サスケ」

期待に満ちた、その澄んだ秋空色の瞳に、

〔絶対、拒否られるなんて思っちゃいねぇな、コイツ〕

サスケは内心で呆れを含んで嘆息する。

そして、そんなナルトの言動を許してしまう自分に対しても、大きくため息を吐く。

「……はぁ」

「サスケ?」

「…こっちだ」

クイッ、と顎をしゃくると、ナルトは嬉しそうに破顔した。










「で、これを入れて、っと」

「何分だ?」

「1分?」

レンジの前で小首を傾げるナルトに、

「おい(怒)」

サスケの声が尖る。

「だーッ、もういいから、スタートだってばよ」

えい、とばかりにボタンを押せば、中のターンテーブルが回り出した。

と、間もなく。

ボン!

「「わっ!」」

綺麗にハモった二人は、お互いの顔を見やった。

「何だ?」

「わかんねぇ」

そして、再びレンジへと視線を向けた、その時。

ボン!

「「ひぃッ!!」」

ボンッ!

ボン!

「「?」」

ボン!

どうやらそれは、紙袋のなかで銀杏が弾ける音のようだ。

「…ホントに大丈夫なのか?」

「た、多分…」

問うたサスケも、答えたナルトも、二人とも心拍数は上がったままだ。

チン!

異様な緊張に包まれた1分経過を告げる音に、二人の肩から力が抜ける。

「「はぁ」」

安堵のため息を吐き出すと、サスケはレンジを開けて、ゆっくりと中から紙袋を取り出した。

「開けるぞ」

「お?」

皿の上にあけた銀杏が、音を立てて転がった。
「あれ?」

皿に散らばった銀杏は、殻が割れて開いているものと、そうでないものがあった。

「おかしいってばよ」

殻が開いていない銀杏を摘み上げたナルトは、眉間にシワを寄せた。

「ちゃんと開くって言ってたってばよ…」

「仕方ねぇだろ。開いてねぇのはペンチでも使わねぇとダメだな」

「うーん」

何やら考えながらも、ナルトは殻の開かなかった銀杏を皿の上に戻した。

「ペンチを取ってくる」

「うーん」

聞いているのか否かわからないような返事を無視して、サスケはペンチを取りにその場を後にした。



 
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