ナルサス部屋

□豆と悋気と八つ当たり
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【豆と悋気と八つ当たり】




「………」

静かに外の気配を窺っていたサスケは、スーッと閉じていた目を開いた。

もう少し。

あと少し。

距離を測る心を落ち着かせながら。

〔…5、…4、…3〕

慎重に、心の中でカウントを取る。

〔…2、…1〕

「ただいま〜」

玄関のドアが開くと同時に、サスケは握り締めた手を振り上げた。

それから、重力加速度に力も加えて振り下ろす。

パシパシッ!

「痛ッ!」

突然の出来事に、ナルトは咄嗟に両腕で防御態勢をとった。

「何だってばよ!サスケ!」

訴えた先のサスケは、無表情のままで。

「…」

パシパシッッ!

それなのに、叩きつけられる痛みからは、怒りが伝わってくる。

「サスケェ!何だってばよぉ!」

真剣に訴えるナルトの目が涙目になるくらいに、痛かったのだ、ソレは。

「…豆まき」

サスケの無表情な唇から出た言葉に、

「は…?」

ナルトの口からは間抜けな声が出た。

が、それも気に入らなかったのか、パシパシと豆が投げつけられる。

「痛ッ!痛いってばよ!サスケ!」

豆を投げるサスケを止めようと思えば、いくらでもできるのだが。

でも…、とナルトは躊躇う。

多分、こういう突飛な行動に出るには、サスケなりの理由があって。

自分とは違って、無意味な言動を嫌うサスケを、ナルトは知っている。

だから、敢えてここは大人しく防御態勢を維持することにした。










「痛ッ!痛いってばよ!サスケ!」

反撃しないナルトに、サスケは豆を投げつける。

投げつける…というか。

最早、ぶつける、という方が表現としては正しいのかもしれないが。

〔ムカつく〕

確かに、ナルトが帰ってくるのを玄関先で待ってはいたが。

『ただいま〜』

という楽しそうな声を聞いた途端。

サスケの中で、プチリ、と何かがキレた。

その後はもう、苛立ちだけが渦巻いて、サスケは手にした豆をナルトに投げ続けた。

その間ずっと、ナルトからは、

「痛いってばよ、サスケェ!」

という言葉だけで、反撃もなかった。

だが、その態度が益々サスケの行動に拍車をかけたなど、当のサスケにしかわからないことで。

ナルトにわかるはずもなかった。



 
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