宝物殿

□We can't part each other (ナルサス)
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あの二人が請け負った任務内容は中々に過酷だった。正直、話を聞いた当初はこの二人を殺すための任務なのだろうかとそう思われても仕方無い、そんなレベルなのだ。

その内容に対して派遣されたのはどう考えても不十分なうずまきナルト、うちはサスケの率いるスリーマンセル二組だけ。
やはり、そうじゃないのか、と。疑わないではいられなかった。





「……」

暗闇を待ってから秘密裏に着々と進められている作戦はその考えを改めざるを得なかった。


「…出来るからこそ、なのか…」


あくまでも傍観者として局戦を眺めながら、口からは呟きが溢れた。
それが呆然としていたとしても、咎められる筋合いはない。



あのあと、うずまきナルトとうちはサスケがそれぞれスリーマンセルを率いて二手に別れ、夜を待ってから作戦は決行された。敵は木の葉の忍崩れ、落ちた忍の集団。否、正確には「反うずまきナルト集団」だ。

誇張でも冗談でもなんでもなく事実。彼らの実態はそうだという。

「私達はうずまきナルトと共闘体制を取り得ない」

ましてや、

「うずまきナルトの火影就任などもっての他」

だと。確かにその考えは容易く否定出来ない。過去に起こった忍界の大きな戦いを省みて歴史は言うのだ。「人柱力は戦いを呼ぶ」と。

それを憂うなら、彼らの理念を一概に否定出来まい。史実である。それもその人柱力はあの「うずまきナルト」だ。


更にうずまきナルトの隣には、「うちはサスケ」がいる。いっそ神々しいまでの美貌と、「精確無悲」冷え冷えとした容赦の無い術を放つうちはサスケが。


だからそう、確実だ。


恐らくは、里では彼らレジスタンスの支持は得られなかったのだ。否、だからこそのレジスタンスなのだろう。彼らは忍崩れ扱いをされているがその実態はかなりの手練の集まりだった。

上忍であっただろう。しかし、見る限り彼らの中にうずまきナルトやうちはサスケと面子を張れるような、あの二人に対抗しうるほどのビッグネームはいない。


最大の軍事大国「木の葉」を象徴する二人は、予想を遥かに越えていた。


(声が出ない、は虚言だな…)


このレベルでは、いくらなんでもそれは有り得ない。

いくらうずまきナルトとうちはサスケのツーマンセルが無敵を誇ったとしても、この眼下に繰り広げられている戦場には彼らだけではないのだ。

両者間はともかく、引き連れていた部下とまで以心伝心、とはいくまい。

けれど、ならば。

二人の各自率いるスリーマンセルの、この卓越した連携はなんだ。


戦術理論を交わし、実戦をどれだけ行ったところで年若い彼らの部下に、これほどのそつのない戦いは出来まい。

特筆すべきは、そこだった。

彼らが連れているのは、それこそ木の葉が激震したそのときに忍者養成所にも通っていなかったような若い忍なのだ。


何をどうすれば、人を殺めた経験があるかも疑わしい天下太平の世に生まれた忍が、幾戦もくぐりぬけたかのような動きを取れる。


既に戦局の、どちらに分があるかは歴然としていた。


(…‥ん?)

木の葉側に先程からちらちら現れる妙な動きが再びあった。

その「妙な動き」を数度目に捉えるにつれ頭がどんどん冴えていく。


「…黄金のツーマンセルの延長線上…なのか…?!」

ひとつ、疾った閃きは最早確信だった。

うずまきナルトがわざわざ検討違いに身体から離れたところへ投げられたクナイを叩き落とした次の瞬間そこにうちはサスケ率いるスリーマンセルが現れる。うちはサスケが前触れもなしに跳躍したかと思えば、消えた絶妙のタイミングでうずまきナルト率いる血継限界伝承者がそこに術を放つ。

それは、うずまきナルトの隊がうちはサスケに合わせているのか、うちはサスケの隊がうずまきナルトに合わせているのか。
連携の程度からすれば、うずまきナルトとうちはサスケが、己の率いる隊に合わせているのかもしれない。

ただひとつ明らかなのは、うずまきナルトは声など発していなかった。



勝敗など、始まる以前に揺るぐこともなく決していたのだ。


 
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