あべきよ!

□昼休み、一組にて。
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2つの机を合体させて、それを囲んで弁当を食べる。


「で?どうしたの?」

「うん…あのさ…」


何から話したらいいのやら言葉に迷う。


「…2人は、もし親と友達がデキてたらどうする!?」






「……は?」



2人はポカンとして俺を見る。



「いや、つか友達、っていうより…阿部と、母親が。」



今度は2人共顔を見合わせる。



話の切り出し方悪かったかな?



「いや…そりゃ、よくはない、よな?なんか想像もつかないけど。」



巣山がたどたどしく答える。



「じゃー栄口は?」



聞いた途端、巣山がバカッ!って小声で怒鳴ってきた。



「あー…俺、母親いないからよくわかんないや。」



「…え!?」



「お母さん、死んじゃってさ。」



俺はその言葉を聞いてものすごく驚いた。


「ごっ…ごめん…!」


「あーいいよいいよ。俺もそんな気にしてないから。」



気にしてないわけないじゃないか!



俺がどんな顔で栄口を見てたかわからないけど、

「そんな顔すんなって!みんなに気を遣わせたくないからそのこと言わなかったんだから!」


って逆に栄口から慰められた。



「…でも…」


「で?水谷の悩みってのはもしかして阿部とお前の母親がデキちゃったってか?」



俺がまだ何か言おうとしたら、巣山が言った。


それで俺も思い出す。


「そうっ!そうなんだ!」


「えっ?そうなの?」



「そうなの!どうしよう!」


「え、いや…本当に阿部に母親取られたのか?」


「うん!!」



また2人が顔を見合わせる。


「…それ…本当の話?」


「ホントだよぉ!だからこんなに悩んでるんじゃないか!」


「でもなんか話がよくわからないんだけど…」


「なんか、家帰ったら阿部も来て、わかりやすくお母さんとイチャついてたんだよ!お母さんが、たかや君がふみきのパパよ、みたいなこと言ってさ!」




「…阿部の…新手の嫌がらせじゃないの?」



栄口が微妙に半信半疑な顔のまま言った。


「でも阿部がわざわざ水谷のためにそこまで手の込んだことするか?」



「あー。確かに。」




巣山ひどいっ!栄口も同意しないでよ!


とは思うけど、
でもそんなことは今問題じゃない。


「で、どうしたらいいかなぁ!」


「どうもこうも…そういう経験したことないからなぁ…」


「な…。」


「俺、阿部が父親なんてやだよぉ!」


あはは…と2人が俺と目を合わさずに笑う。


改めて俺は自分の身の不幸さに泣けてきた。


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