小説

□ある雨の中
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バスを待つのがこんなにも楽しいのはきっと貴方が隣にいるお陰なのだろう。
生憎の雨でいつものきりっとした横顔が見えないのはちょっと残念だ。

一向に止まない雨に時折見せる貴方の哀しげな表情は何を語るの?

そんなバスを待つ学校帰り、今日の貴方との出来事を思いだす。…

床に落とした貴方の落書きつきの教科書を貴方は何も言わずにとってくれた。
その教科書を私に差しだしてくれた時の貴方の唇が少し綻びていて。
思わず整った顔と唇に見とれてしまった。


貴方はいつも無口で無表情で‥そんな貴方が誰よりも気になって気になって。

そう…貴方は気付いてない。
こんなにも貴方の事が好きな私を…


貴方との距離は1メートル
バスよ…遅れろ。 貴方と共有できる時間はきっと今だけだから。

ふいに貴方を見ると幸せそうな顔で笑っていた。
…そんな貴方を見たらついつい笑顔になってしまう。
きっと貴方と同じ幸せそうな顔をしているに違いない。
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