小説
□捨て猫
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「ハァ」
ため息を吐く。
目の前には猫。
*捨て猫*
きっとこんな時に外に出てる奴なんて俺以外誰もいないだろう。
黒のジャージは余計に黒く滲み、水を含み重くなっていた。
(…天気予報、見ておくべきだったな。)
ランニング中に突然雨が降り出し俺は急いでアパートに帰るところだ。
…声が聴こえる。
おかしい。
こんな時に外に出ているのは俺だけに違いないが‥。
周囲を見回すが誰もいない。
ニャー。
…猫か。
足元はゴミ捨て場。
その付近には段ボールに入った猫が哀しげな声で泣いていた。
どうやら捨てられたらしい。
段ボールには"可愛いがって下さい"と書かれている。
……動物は苦手だ。
哀しげに鳴く猫に構わず、淡々と通り過ぎる。
アパートに入った。
「……。」
アパートを出る。
「…。」
「…ハァ。」
ため息を吐く。
「ニャー。」
手には猫。
そして現在に至る。
取りあえず猫を凝視する。
「…」
「ニャー。」
「あぁ…ミルクか。」
ミルクを入れたボールを猫の側に置く。
飲まない。どうやら恐がっているらしい。
「ニャー」
猫の眼は警戒しているようだった。
「…飲め。」
一言を発して5分後、警戒はまだしているものの少しずつミルクを飲み始めた。