SHORT
□なんなりと
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「あ、えっと、スクアーロの兄の、ザンザスの分です」
「っ……」
綱吉がそう言うと、途端に男たちは血相を変えた。
かと思うと、矢継ぎ早に、綱吉に名前や年齢を尋ねてきた。
それから、慌てた様子でどこかに電話を掛け、何かを早口で話している。
何が何だかわからない綱吉は、ぽかんと事のなり行きを見守るしかない。
「あ、あの……?」
10分程そんなバタバタが続き、さすがに不安になって男たちを見上げると、急に2人が綱吉の前に立ち塞がり、ガバリと頭を下げてきた。
「は……?」
思わず聞き返してしまう。
「っ申し訳ありませんでした!!あなたが、ザンザス様のお連れ様とは知らず、無礼の数々……!」
「んなーーーっ!?」
思わず絶叫した。
訳がわからない。
「あ、あの、頭を上げてくださいっ!別に、気にしてませんから…!」
わたわたと手を振って、男たちに近寄る。
何とか説得して頭を上げてもらうことは出来たが、2人の表情は固い。
…これは、あれか。
ザンザスはここでも暴君ぶりを発揮しているということか。
2人の青い顔を見ていると、なんだか途端に申し訳なくなってきた。
気分は、駄目な弟を持ったお兄ちゃんだ。
すみません、いえいえこちらこそ、とひとしきりお互いに謝ってから、綱吉は2人に案内され、ようやく鉄の門の中へ足を踏み入れることが出来た。
中に入って数歩進んだところで、背後で、ギイィ、と嫌な音を立てて門が閉まった。
なんだか不安になって辺りを見回すと、敷地内に入ったはずなのに、周りは変わらず木ばかりで、学校らしき建物は見えなかった。
立ち止まっていると、前を歩く男性たちが怪訝そうな顔で綱吉を振り返った。
「あ、すみません…」
そのあとを小走りで追う。
キョロ、と目線を辺りに巡らせながら、綱吉は心の中でため息をついた。
ただ学校を見てみたかっただけなのに、なんなんだこの面倒臭さは。
さっそく帰りたくなってきた。
「はぁ…」
ランチボックスを抱きしめ、綱吉は空を仰いだ。
(学校の面倒臭さを知らない綱吉くん)