SHORT

□なんなりと
4ページ/15ページ









前言撤回。


と、綱吉は心の中で叫んだ。


「わぁ…」



そこには、綱吉が長年夢見た学校の風景が広がっていた。

グランドでは、体育の授業中なのだろう、生徒たちが走っている。

大きなレンガ造りの校舎の窓には、授業を受けている生徒たちが見えた。


すごい。


すれ違った男子生徒たちが、黒服の男たちに『ちぃーっす』、と挨拶をしている。

この、だらしない感じ!!
生の高校生だ!!

男子高校生たちは、キラキラした目で見てくる綱吉に若干引きながらも、ペコリと会釈をしてくれる。

いい子だ!!

興奮気味に歩いていくと、玄関口、のような所に着いた。

どうぞ、と言って、来客用、と書かれたスリッパを用意してもらった。


キョロキョロしながら、それに足を通す。

「……っ!」


ついに。
入ってしまった、学校……!!


男たちに続いて、ペタペタと廊下を歩く。

途中、教室の前を通りすぎると、教壇に立つ先生の声が聞こえた。

背伸びして中を覗きこむ綱吉を、男たちが可哀想なものでも見るような目で見ていたが、夢中になっている綱吉には気にならなかった。



しかし、そんな調子で浮かれていた綱吉は気づかなかった。

途中から、明らかに男たちの顔色が悪くなっていることにも。


いつのまにか隣接している建物に移動していたことにも。

そして、壁に、『S科→』という標識が出ていることにも。



その違和感に綱吉が気づいたのは、そこからしばらく歩いてからだった。


……いい加減、広すぎるだろ。


と、冷静になれたのは、いつのまにか、あちらこちらから聞こえていた、先生や生徒たちの声が全く聞こえなくなったためだ。

そこで初めて周りを見回すと、なんだか、こう、全体的に、暗い廊下を歩いていることに気がついた。

照明が異常に少ないし、なにより、さっきまで沢山あったはずの窓がない。





「え……」


そうして目の前に現れたのは、無機質な鉄のドアだった。
廊下の突き当たりに、ポツンと1つある。


とってすら付いていないそれを、どうやって開けるのかと思っていると、黒服の一人が、銀色のカードを取り出した。

それを、ドアの隣にある読み取り機に通す。

ピッ、と言う音がして、シューッ、とドアが横にスライドした。


いくら学校に疎い綱吉とはいえ、こんなものが学校に無いことくらい分かる。


なんなんだ、ここ。


ようやく、自分が明らかに異質な場にいることに気づいた。

自分の師匠であるリボーンがもしここに居たとしたら、『なにボサッとしてやがったんだダメツナ』、と蹴りの一つもくらうところだろう。


呆然としながら突っ立っていると、男たちが綱吉を振り返った。


「私たちが案内できるのはここまでです。申し訳ありませんが、ここからはお一人でお進み下さい」

綱吉は目を見開く。

「えぇっ、そんな!…で、でも俺、道とか全然分かりませんけど!」

「ご安心下さい。しばらくは一本道です。それに、先程スクアーロ様から、こちらへ向かっていると連絡がありました。」

「スク、アーロが……?」







次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ