SHORT

□なんなりと
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結局、怯えながらも、綱吉が先に進むことが出来たのは、先程男から言われた、スクアーロ、の名前が大きい。


スクアーロと合流できれば、ここが何なのか説明してもらえるし、何より、安心出来る。


早く知り合いに会いたい気持ちから、自然と足が早まった。



男たちに言われた通り、廊下はしばらく一本道だった。

道に迷う心配は確かに無さそうだが、薄暗い廊下を歩くのは、正直、怖い。

しかも、綱吉が歩き出してからすぐに、唯一のドアは閉じられてしまった。

どちらにしろ、進むしかない。

「はぁ……スクアーロ、早くきて……」


思わず泣き言が漏れる。
怖いのはめっぽう苦手なのだ。

と、その時

「ゔお゙ぉぉいっ!」



聞きなれたダミ声が響いて、綱吉はパッと顔を上げた。
そしてそこに、見慣れた顔を見つけて、綱吉は、ほっ、と安堵のため息をついた。


「綱吉ぃ、お前こんなとこで何してるんだぁ…!?」

スクアーロが仁王立ちで綱吉を待っていてくれた。

「スクアーロ……」


堪えていた涙がこみ上げる。

ふらふらとスクアーロに近寄ると、綱吉はポフンと彼に抱きついた。

「ゔぉ゙……」

「こ、恐かった……!!」


スクアーロが、戸惑いながらも頭を撫でてくれる。


ザンザスに年下のように扱われるのは腹が立つのに、何故だかスクアーロには、そうされても嫌じゃなかった。


不思議だ。


綱吉が落ち着くまで、スクアーロは待っていてくれた。
本当に、あのザンザスと血をわけた兄弟とは思えない程、優しい弟だ。

綱吉はうんうん、と頷いた。

ちなみに、スクアーロの優しさは、綱吉限定のものなのだけれど、当事者である綱吉が知るはずもない。


「……で、さっきも聞いたが、こんなとこまで何しに来たんだぁ?」

「あ、そーだった!!スクアーロ、ザンザスの肉忘れてったじゃんか。それを届けに来たんだよ」


そう言うと、スクアーロはポカンとした後、みるみるうちに青くなった。

「ヴぉおおい……、俺としたことが、何てこったぁ……ハッ!今何時だぁ!?」

「えっ!?えっと……多分12時、は過ぎてると思うけど…」

綱吉がわたわたと答えると、スクアーロは頭を抱えた。


「ヴぉおおい、やべぇぞぉ……」

そう、スクアーロが呟いた時だった。

スクアーロの背後で、ドサッ、と何かが倒れる音がした。


二人でそちらを見ると、スクアーロと同じ制服を着た男子生徒が倒れていた。







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