SHORT
□なんなりと
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スクアーロが言った通り、ザンザスの機嫌は今、最悪らしい。
目の前にいない綱吉さえ、空気がピリピリしているのを感じた。
ていうか、空腹でこれって……子供かお前は。
ちょっと悲しくなった。
「う゛おぉい……、すまねぇ、なぁっ…!」
その時、苦しそうなスクアーロの声が聞こえて、綱吉は、ハッ、と我に返った。
隙間から、再びスクアーロの様子を伺う。
スクアーロは、何とか自力で起き上がったようだが、苦しそうに肩で息をしている。
足元も覚束なくて、いつ倒れてもおかしくない状態だ。
その様子を、綱吉はハラハラしながら見守る。
もう、自分の心配なんてしてる場合じゃなかった。
「おい、カス鮫」
ザンザスの声に、耳をそばだてる。
扉の縁に手をかけた。
これ以上ザンザスがスクアーロに危害を加えるのなら、綱吉は、乱入することも辞さない構えだった。
「…、なんだぁ」
スクアーロが、苦しそうに返事をする。
「……その、隠してるものは何だ」
その言葉に、ギクッ、としたのは、スクアーロか綱吉か、もしくは両方だろう。
ザンザスの視線が、扉越しに、真っ直ぐ自分を捉えているのを感じた。
だが、自分だって、リボーンの元で長年気配を消す訓練をしたのだ。
こんな簡単に見破られるなんて、まさかザンザスは、透視でも出来るんだろうか。
「う、う゛ぉおい、なに言ってやがんだぁ、隠すものなんてねぇぞぉ」
「聞こえなかったのかカス、……その、後ろに隠れている奴を出せ」
ザンザスの声は、決して大きい訳ではないのに、かなり距離のある綱吉の所まではっきり聞こえた。
「ぅ、う゛ぉおい、何言ってんだぁ…」
スクアーロが尚も誤魔化そうとしているのが分かったけど、こうなってしまえば無駄な事も分かっていた。
これ以上ザンザスを待たせれば、余計に機嫌をそこねるだけだ。
スクアーロだって、もう、無駄な抵抗だっていうことは分かっているだろう。
綱吉は、はぁ、と項垂れながら、扉を押し開けて、ゆっくりザンザスの前に姿を現した。