SHORT

□なんなりと
9ページ/15ページ





スクアーロが言った通り、ザンザスの機嫌は今、最悪らしい。

目の前にいない綱吉さえ、空気がピリピリしているのを感じた。

ていうか、空腹でこれって……子供かお前は。

ちょっと悲しくなった。

「う゛おぉい……、すまねぇ、なぁっ…!」

その時、苦しそうなスクアーロの声が聞こえて、綱吉は、ハッ、と我に返った。

隙間から、再びスクアーロの様子を伺う。

スクアーロは、何とか自力で起き上がったようだが、苦しそうに肩で息をしている。

足元も覚束なくて、いつ倒れてもおかしくない状態だ。

その様子を、綱吉はハラハラしながら見守る。
もう、自分の心配なんてしてる場合じゃなかった。

「おい、カス鮫」

ザンザスの声に、耳をそばだてる。

扉の縁に手をかけた。

これ以上ザンザスがスクアーロに危害を加えるのなら、綱吉は、乱入することも辞さない構えだった。


「…、なんだぁ」

スクアーロが、苦しそうに返事をする。


「……その、隠してるものは何だ」

その言葉に、ギクッ、としたのは、スクアーロか綱吉か、もしくは両方だろう。
ザンザスの視線が、扉越しに、真っ直ぐ自分を捉えているのを感じた。

だが、自分だって、リボーンの元で長年気配を消す訓練をしたのだ。


こんな簡単に見破られるなんて、まさかザンザスは、透視でも出来るんだろうか。

「う、う゛ぉおい、なに言ってやがんだぁ、隠すものなんてねぇぞぉ」
「聞こえなかったのかカス、……その、後ろに隠れている奴を出せ」

ザンザスの声は、決して大きい訳ではないのに、かなり距離のある綱吉の所まではっきり聞こえた。

「ぅ、う゛ぉおい、何言ってんだぁ…」

スクアーロが尚も誤魔化そうとしているのが分かったけど、こうなってしまえば無駄な事も分かっていた。

これ以上ザンザスを待たせれば、余計に機嫌をそこねるだけだ。

スクアーロだって、もう、無駄な抵抗だっていうことは分かっているだろう。


綱吉は、はぁ、と項垂れながら、扉を押し開けて、ゆっくりザンザスの前に姿を現した。








次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ