パラレル

□隣のザンザスさんU
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綱吉の苦手な物は多い。

例えば数学。
例えばスポーツ全般。
それに、近所の猛犬(チワワ)。
それから、真っ暗な部屋。

ベッドに仰向けに寝転んだ綱吉は、目をかっ開いて天井を睨み付けていた。

薄ぼんやり見える天井の染みが、なんだか人の顔に見えるような気がして、綱吉は、ギュッ、とお腹に掛けたブランケットを握った。

これだから、真っ暗な部屋は嫌なんだ。
恐怖が睡魔に勝ってしまう。
それが分かっているからこそ、いつもは中間色になるように電気を調節しているのに。

綱吉はジトリと、隣で眠る男を睨み付けた。

狭いと文句を言いながら、何故か一緒のベッドに潜り込んだご近所さんのせいで、迂闊に寝返りもうてない。

この隣人の、『暗くない部屋で寝られるわけねぇだろ』、の一言で、綱吉の部屋の明かりは消されてしまった。

…全く、横暴だ。

だが、今日、待っててくれたザンザスを置いてけぼりにしてしまった綱吉としては、どうにも強気に出れない。

それに、この隣人が此処にいるからこそ、1人じゃない、と暗い部屋に我慢出来ている部分もあって、綱吉は微妙な気分だった。




〜隣のザンザスさんU〜




……駄目だ、寝れない。


小さく息を吐き、綱吉はそっと上体を起こした。

その拍子にベッドがギシッと音をたててしまい、思わず固まる。

ギギッと顔を動かし、自分の脇で寝ている人物を見下ろす。


―――どこからどうみても悪人面の彼は、寝顔も怖かった。
眉間に皺寄せたまま寝るって、お前はどれだけ嫌な夢を見ているんだよ。


けれどどうやら起きる気配はなさそうで、綱吉はほっと安堵の溜め息をついた。

彼を起こさないように細心の注意を払いながら、ベッドから足を降ろす。

冷えたフローリングの床は素足にはちょっと冷たくて、思わず身震いした。


そろそろとドアに向かい、全神経を集中させて、音を立てない様にそれを開けた。

廊下に出た後もできるだけゆっくり、後ろ手にドアをしめ、しばらくそのままじっとしてから何も物音がしないのを確認すると、ホウッと溜め息を吐いた。


「………はぁ、眠いのに寝れない」


泣きたい気持ちになりながら、綱吉は、自分の部屋を振り返った。

なんでザンザスがウチにいるのかというと。

なんでもザンザスのお父さんが今日は出張で家にいないらしく、一晩だけだが、ザンザスは綱吉の家に泊まることになったのだ。


まったく、綱吉にとっては迷惑極まりない話である。

もう一つ、これで何度目かになる溜め息をついたあと、綱吉は水でも飲もうと台所に向かった。







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