パラレル
□隣のザンザスさんU
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「ーーーー……っ!!」
声にならない悲鳴をあげる。
恐怖が最大になると、もはや声も出ないのだと知ってしまった。
別に知らなくてもよかった。
が、しばらくそのまま固まっていたのだけれど、いつまでたっても何も起こらない。
それに、なんだか肩に乗ったものが暖かいような…
「…………あ、れ?」
さすがに不思議になって、ソロソロと後ろを振り返ってみた。
「……!、ザ、んっ!!!」
振り返った途端、強い力で抱き締められる。
一瞬ビックリしたけれど、冷えた身体にそれは結構心地好くて、綱吉はゆっくりと力を抜いた。
「ビックリさせるなよ…ザンザス…、」
後ろにいたのはザンザスだった。
しかも、どうやら寝惚けているらしく、目の焦点が微妙にあっていない。
さらに、目を閉じかけているところを見ると、どうやら綱吉を抱き締めたままここでまた寝るつもりらしい。
船を漕ぎ始めたザンザスに、綱吉は慌てて声を掛けた。
「ちょ、待て待てザンザス!!!ここで寝るなよ!?」
「…あ゙?…………………………………………………………なんでテメェがそこにいる」
そこ=ザンザスの腕の中
さっぱり状況が読み込めていないらしいザンザスに、綱吉はガクッと脱力した。
「……こっちが聞きたいよ」
とりあえず部屋に戻ろうと声を掛けると、よっぽど眠かったのか、ザンザスはコクリと頷いた。
素直なザンザスが珍しくて、綱吉はクスッ、と笑う。
結局そのまま二人仲良く…はならなかったけど、まぁ向かう先が同じなので一緒に部屋に戻った。
恐怖体験をした拍子に、綱吉の緊張の糸も緩んだらしい。
いい感じに眠気が襲ってきた。
ベッドに潜り込み、さぁ、今度こそ眠ろう。
と、決意したはずなのに。
「………………」
「………………」
「……………あのさ、」
「………………」
「…ザンザス?」
「………………」
「寝たの?」
「…何だ」
「起きてんじゃん!、……じゃなくて、…なんで俺は抱き締められてるんでしょーか?」
俺は抱き枕か。
「抱き枕だ」
ビンゴ!?
「って、ちょ、ザンザス!?寝るなら俺を離してから寝ろよ!!…おい、ザンザスってば!!」
綱吉の叫びむなしく、ザンザスはあっという間に眠りについてしまい、綱吉は抱き枕になることが決定してしまった。