パラレル
□隣のザンザスさんU
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「うー…!………はぁ、はぁ……」
ジタジタ暴れてみたものの、ザンザスはびくともしなかった。
「はぁ……、あぁもう、いいや…」
綱吉は、持ち前の諦めの早さを発揮して、さっそく抜け出すのを諦め、そのままザンザスの腕の中でまるくなった。
暖かいし、細かいこと考えなければ居心地がいい…………こともないかもしれなくない。
いくら寝顔が恐くても、だからといってそのまま噛みついてくるわけじゃあないし。
―――てか、よく考えたらザンザスの寝顔なんて、かなり希少価値が高いんじゃ……?
そう思ってゆっくり顔をあげると、やっぱり眉間に皺は寄ってるけど、それでも端正な顔がそこにあった。
思わずぼうっとみとれる。
キレやすいし、人の話聞かないし、暴力的な最低人間だけど、その反面、実は影で男女共にカリスマ的な人気があることを綱吉は知っていた。
中学の時なんか、綱吉がザンザスのお隣さんだと知れわたった途端、毎日のように女の子からラブレターを渡された。
…………ザンザス宛ての。
今より喧嘩ももっと多くて、どこそこの誰を倒したとか、1人で20人を相手にしたとかいう武勇伝があちこちから聞こえてきた。
その真偽をよく綱吉はクラスメイトに尋ねられたけれど、ザンザスはあまり自分のことを話そうとはしないので、結局、本当のところはわからなかった。
……平々凡々の綱吉には、本来なら知り合いにすらなれないような雲の上の人物であるはずなのだ、ザンザスは。
そう考えたら、なんだかザンザスがとても遠い人な気がして、何故か一瞬胸がチクリと痛んだ。
「…………あれ」
不思議に思ってシャツの上から胸に手を当ててみたけれど、その微かな痛みはもうすでに消えていた。
…なんだかモヤモヤして気持ちが悪い。
もうさっさと寝てしまおうと思うのに、またもや、頭が妙に冴えてしまって、どうにも寝ることが出来ない。
しかも、今度はザンザスに抱き締められているので、布団から抜け出すこともできない。
普通にぐーすか寝ているザンザスが心底恨めしかった。