SHORT
□恋に恋する男
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「どどどどうしよう…」
ザンザスにデートしないかと誘われ、あぁとかうぅとか唸った綱吉の言葉を了承ととったザンザスに、「やっぱり、なし!」、と言えないまま、あっという間に約束した日がやってきてしまった。
だって、会う度に、あと三日だな、あと二日だな、なんて、良い笑顔で確認されたら、さすがの綱吉も断れなかった。
しかも、約束した時間までまだ三時間もあるというのに、どうしていいかわからなかった綱吉は、既に待ち合わせ場所に来てしまっていた。
わんちゃんの像がある、その人気の待ち合わせスポットは、昼前から既に人でごった返していた。
その中でもつい、カップルの姿を目で追ってしまう。
「……デートなんて、初めてだ……って、いやいや、これはデートじゃないし!!遊びに行くだけっ!!」
バタバタ暴れてしまい、ハッと周りを見ると、周りが不思議そうに見ていた。
真っ赤になって、姿勢を正す。
やっぱり、早く来すぎた。
近くの喫茶店にでも入って、時間を潰そうと思い立って、綱吉は足を踏み出した。が。
「綱吉……?」
「え……?ザン、ザス……?」
声のした方を振り向くと、驚いた顔のザンザスが立っていた。
ザンザスの姿は、当たり前といったら当たり前だけど私服だった。
ラフなパーカーに、タイトなスラックスがブーツインしてある。
制服姿しか見たことのなかった綱吉は、なんだかドキドキしてしまう。
「な、なんで、ザンザス…」
「いや……早く来すぎた」
ザンザスが困ったように呟く。
自分と同じだ。
なんて思ったら、不覚にもちょっと嬉しくて、ニヘッと笑ってしまった。
「俺も。デートなんて初めてでさ、……あ」
しまった、と思うより早く、ザンザスがニヤリと笑う。
恥ずかしい。
これでは、今まで彼女がいたことがありませんと言っているようなものだ。
俯いた綱吉の頭に、ザンザスの手が乗る。
「俺もだ」
「は?」
「綱吉が、初めてだ」
顔を上げた先には本当に嬉しそうなザンザスの顔があって、綱吉は真っ赤になった。
ナチュラルに綱吉の手を握るザンザスに、嘘つけ、と思ったけれど、顔を上げられない綱吉は何も言えなかった。
to be continued...