SHORT
□プレゼント
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※マーモンは女の子
※ザンツナ前提です
「良かったら、これ、どうぞ」
そう言ってボンゴレが僕に差し出したのは、真珠と貝をモチーフにした、華奢なイヤリングだった。
「なに、これ」
思わず受け取ってしまってから、ニコニコと笑う、ボンゴレを見返す。
「京子ちゃんとハルが話してたんだ。最近の流行なんだって」
「いらない」
ペイっ、と投げ返す。
「わーーーっ!!ま、待ってよ」
なんとか受け取ったボンゴレが、踵を返した僕の後を追ってくる。
馬鹿じゃないのか。
暗殺を生業としている自分に、こんなものを勧めてくるのはコイツぐらいだ。
「ま、まってよマーモン!!」
「うるさい。いらないって言っただろ、着いて来るな」
「マーモンだって女の子なんだからさ、いくらヴァリアーの一員っていったって、たまにはこういうのもしないと、勿体ないって!!」
そう言ってバタバタと引っ付いてくる。
女の子……?
イラッときて、ピタリと足を止めた。
ボンゴレを振りかえる。
「僕は暗殺者だ。女として生きる気なんかこれっぽっちもないよ」
「マーモン……」
悲しそうな顔をして、ボンゴレが上目遣いに見てくる。
う、と思わず言葉に詰まった。
失敗した。
いつものように無視しておけば良かった。
コイツの上目遣いは、ある意味凶悪なのだ。
チラッ、と目線を動かして、本当にこれが、今年24歳になる成人男性だろうかと考える。
日本人は若く見える、という話はよく聞くが、いくらなんでもこれはないと思う。
しかも、童顔なくせに、最近はボスのおかげなのか、何やら中性的な色気まで出てきている。
その事に本人が全く気付いてないのも厄介だ。
ボスの気苦労を想像して、思わずため息が出た。
「いいから、僕の事は放っといて」
「そんなこと、出来ないよ。マーモンも、俺の大事なファミリーだからね」
そう微笑むと、いつの間にか、マーモンの手にイヤリングを握らせてくる。
「あ……」
「絶対、マーモンに似合うだろうなって思ったんだ。気が向いたらで良いから、つけてみて」
ボンゴレは、いつも弱腰の癖に、不思議と有無を言わせない空気を持っている。
一人廊下に佇みながら、手に握ったイヤリングを眺める。
思い浮かぶのは、絶対似合う、と微笑んだボンゴレの顔。
ボスのものじゃ無ければな…、と不毛なことが頭をよぎった。
手に乗せたイヤリングは小さく、コロコロと手のひらを転がった。
このイヤリングをつける日は、きっと一生こないだろう。
これを貰ったことは、ボスにも内緒の、僕だけの秘密だから。
クスッと微笑んで、マーモンは歩き出した。
不思議と、足取りは軽かった。
END