パラレル
□隣のザンザスさん
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実は、ザンザスが綱吉にこういうことをするのは、初めてじゃない。
男にチュッチュして何が楽しいのかわからないが、ザンザスは時たま思い出したように綱吉に口付ける。
もちろん、綱吉にソレを許可した覚えはない。
ただ、ザンザスはいつも平然としていて、何事もなかったかのように振る舞うから、突っ込むに突っ込めないでいるのだ。
理由を尋ねてみたい気もするが、同時に同じくらい、その理由を知りたくないとも思う。
なんか、本能的に。
一階に降りていくと、テーブルにはしっかりと綱吉の朝御飯が準備されていた。
それから、何故かザンザスの分の朝御飯も。
「は!?ちょ、なんでザンザスの分まであんの!?」
思わず叫んでしまって、ザンザスに睨まれた。
「ひっ!」
何年経っても、綱吉はザンザスの目が怖くてしかたなかった。
その真っ赤な目で睨まれると、まるで金縛りにでもあってしまった様に体が動かなくなるのだ。
「ザンザス君のお父さんが今日は出張でいないらしいのよ」
固まってしまった綱吉に助け船を出したのは、洗濯カゴを抱えた母さんだった。
「この物騒なご時世に高校生の男の子が一人なんて危ないでしょ?だから明日まではザンザス君ウチに泊まるのよ」
…ザンザスに出会ったら、強盗の方が逃げてくよ。
心の中で思ったが、口には出さなかった。
部屋数が無いから、夜はツナの部屋に二人で寝てね〜、と言う母さんの声を聞いて、綱吉の頭に『絶望』の二文字が浮かんだ。