パラレル

□恋に恋する男
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名前を知る



「俺はザンザスだ」
「アァソウデスカ、ソレヨリ離シテクダサイ」

 相変わらず綱吉を抱き締めたまま勝手に自己紹介を始めた男に、綱吉は適当な返事を返す。
 さっきから精一杯抵抗しているのだが、ザンザスと名乗った男はかなり力が強いらしく、ビクともしない。

「おい、こっちが名乗ったんだ、テメェも名乗れ」
「っな、何で……!!
「ゔぉ゙おいっ!! ザンザスッ!! やっと追い付いたたぜぇ、……って、ぁ゙? そのガキは何だ」

 あぁまたわけのわかんないのが来た、と綱吉は項垂れた。
 今日は厄日らしい。

「俺の運命の相手だ」
「誰がだっ!! 」
「男じゃねぇかぁっ!! 」

 綱吉と、後から来た銀髪の男が同時に叫んだ。
 どうやら銀髪の方がまともな精神をしているらしい。

「ちょっと、ねぇ、この人なんとかしてよ!! 」

 そう思って銀髪に助けを求めたのだけれど、「それは俺には無理だぁ」、と、残念な答えしか返ってこなかった。

「おい、いいからテメェの名前を教えろ」
「嫌だよっ!! 」

 振り返って叫ぶと、思ったより顔の距離が近くてビクリと固まってしまった。
 しかも、綱吉を見つめながらザンザスがボッと頬を染めたりなんかするものだから、こっちまでつられて恥ずかしくなる。

「……ゔぉ゙お゙い、いつまでそうやってるつもりだぁ」

 銀髪の呆れを含んだ言葉で、慌てて顔をそらす。

「と、とにかく離してよ」
「……名前教えたら離してやる」

 あくまでも名前にこだわるらしい。
 更にギュウギュウ抱きついてくる巨体に、段々と諦めが込み上げてくる。

「……はぁ」
「ゔぉ゙お゙い、名前だけでも教えてやってくれぇ。
じゃねぇとそいつ離れねぇぞぉ」

 確かにそのようだ。
 抵抗するのにもそろそろ疲れてきたし、癪だが、腹をくくるしかなさそうだ。
 綱吉はもう一度ため息をついて覚悟を決めると、ゆっくり口を開いた。

「……綱吉」
「あ? 」
「綱吉だよ。……俺の名前」

 途端に、ザンザスの顔がパッと明るくなる。

―――といっても、元が悪人顔の為に何かを企んでいるような表情にしか見えなかったけれど。

「ツナヨシ、綱吉、か」
「ほ、ほら、名前言ったんだから、離せよ」

 噛み締めるように繰り返すザンザスがあまりに幸せそうだから、今更ながら恥ずかしくなってくる。

「わかった」

 意外にも、ザンザスは素直に綱吉を解放した。

 ホントに名前だけでいいんだ、と拍子抜けしながら、いやいや、何考えてんだ俺、これでいいんだよ、と一人焦って弁解する。

「じゃ、じゃあ、俺、これで……」
「あぁ、またな」

 くしゃり、と頭を撫でられた。
 綱吉の方が年上の筈だが、どうにも子供扱いされている。

 踵を返し、またなんてあるわけないだろ、と思いながらも、何故か、彼の言う通りなるんじゃないか、なんて変な予感が綱吉の中にぐるぐるしていた。



END...?

 終わりがいまいち気に入らない…
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