パラレル
□恋に恋する男Z
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さらに数週間後
曲がり角から出てきた見慣れた人影に、ザンザスは電柱にもたれていた身体を起こした。
空は、綺麗な朱色に染まっていた。
どこからかやってきた蝙蝠が二匹、屋根の上を不規則に飛び回っている。
「綱吉」
名前を呼ぶ。
綱吉が顔を上げた。
ちょっと驚いた顔をして、それからすぐに、呆れた顔になった。
小走りで、ザンザスのところまで駆けてくる。
は、と綱吉が吐いた息が、うっすらと白く辺りに広がった。
「…今日は遅くなるよって、言ってたじゃん」
近寄ってきた綱吉から、鞄を受け取る。
抵抗はない。
最近は綱吉も、素直に好意を受ける気になってきたらしい。
また恋人に近づいたな、と思う。
「俺の勝手だ」
言うと、今度はくすりと微笑まれた。
ザンザスの一番好きな笑い方だ。
「そう言うと思った」
ほら、と言って目の前に差し出されたのは、コンビニの袋。
「肉まん、食べるだろ? 」
袋から取り出した一個を渡される。
買った当初は熱かったのだろう肉まんは、今では冷えて、ぼんやり暖かい程度になっていた。
「待たせちゃったし、いつも鞄持たせてるし、安いけど、お礼、ってことで」
「…………」
黙って手の中の肉まんを見つめていると、綱吉が不安気に声を掛けてきた。
「ごめん、もしかして、嫌い、だったりした…? 」
首を振る。
「いや…」
と、そこで一端言葉を切って、ちょっと考えた後にもう一度口を開いた。
「…食べたことがねぇ」
ちょっとの沈黙。
「……は」
口も目もポカンと開いた綱吉に、まじまじと見つめられた。
「まじで」
「変か」
「いや…変ていうより…うん、なんか、しっくり、っていうか、納得っていうか…」
よくわからないことをブツブツ呟きながら、綱吉が歩き出す。
ザンザスもそれに従って歩きながら、言葉の続きを待った。
「えっと……なんていうかさ、確かにザンザスに肉まんって似合わない感じだもんね」
「そうか」
手元に視線を落とす。
これは、自分には似合わないらしい。
「いやでも、うまいよ、それ」
「そうか」
綱吉は更に何かを言いかけて、でも結局何も言わないまま、自分の肉まんにかぶりついた。
噛んで、飲み込む。
「……うん、うまい」
そう言って笑う綱吉があまりにも可愛らしくて、ザンザスは暫くみとれていた。
こういう感覚を、幸せ、というのだろうか。
「……綱吉、来週、デートしないか」
思わず言っていた。
綱吉が肉まんを吹き出した。
噎せる綱吉の隣で、ザンザスは自分の分の肉まんをかじった。
確かになかなか美味かった。
to be continued...
や、やっとデートに行けそうな二人…;;
なんか当初の予定と随分違うなぁ…orz;;