パラレル
□兄弟 V
1ページ/1ページ
友達以上親友未満
この四人で行動するようになったのは、綱吉たちがまだ中学生の頃だ。
あの頃はザンザスがめちゃくちゃ荒れていた時期でもあって、兄の綱吉としては、いつも怪我をこさえてくる我が弟が毎日心配でならなかった。
そんな中、身動き取れなくなったザンザスを毎回家まで送り届ける役目を請け負ってくれたのが、スクアーロとディーノさんだった。
もっとも、送り届ける方もザンザスに負けず劣らず傷だらけで、綱吉はいつも閉口していたのだけれど。
不器用であるはずの綱吉が、傷の手当てだけが妙に上手いのには、こういう訳がある。
ぶつぶつ小言を言いながら手当てをする綱吉に、ザンザスとスクアーロが揃って「コイツがいたせいだ」とディーノさんを睨むのも、「いやぁ、悪ぃ悪ぃ」とディーノさんが笑うのも、毎度のことだった。
あの頃に比べると随分丸くなったよな、と、自分の隣を歩く長身を、横目に見る。
勘の良いザンザスと目があって、なんだよという顔をされた。
何もしてない風を装って前に向き直る。
「なぁツナ、今度の日曜日暇か?」
突然肩にのせられた重みに、綱吉は軽くバランスを崩した。
「ディーノさ―――」
「忙しい」
答えたのは、綱吉ではなかった。
「おいおいザンザス、俺はツナに聞いたんだぜ? 」
苦笑まじりに、ディーノさんが言い返す。
「うるせぇ黙れこの馬野郎」
「おま……少しは先輩を敬えよ……」
ザンザスがディーノさんを"馬"と呼ぶのは、ディーノさんが『跳ね馬のディーノ』という通り名を持っていることに由来する。
なんでも、雄々しく駆け回りながら喧嘩相手をバッサバッサと薙ぎ倒すディーノさんの姿が跳ね馬のソレと被ったらしいのだけれど、綱吉の中の彼は階段を転げ落ちるような人であるので、ちょっと想像がつかない。
「……すみません、予定があるのは本当なんです」
バチバチ、一方的に喧嘩腰になり始めた二人の間に綱吉が割って入った。
途端に、ディーノさんの眉がハの字に寄る。
「まじかよ……。せっかく映画のチケットが二枚手に入ったんだけどなー……」
「すみません」、と重ねて言うと、いいっていいって、と苦笑を返された。
「綱吉に用事があるなんて珍しいなぁ゙……」
「スクアーロ……それって俺が暇人だってこと……? 」
冗談だったのに、本気で焦り出すスクアーロはやっぱりちょっと可愛い。
本当に、彼みたいなのが弟だったら良かったのにと思った。
学校へ着くと、3年生のディーノさんは一階に、1年生のザンザスとスクアーロは二階に、そして、2年生の俺は一階へと、それぞれ向かう。
じゃあまたね、と言った俺に返事を返してくれたのは、いつも通りスクアーロとディーノさんだけだった。
こら、ザンザス!、と叫んでいるうちに鐘が鳴り始めてしまったので、綱吉は慌てて教室に向かうはめになった。
END
学校到着。
あまり綱吉のダメっぷりが出ていませんが、彼はきちんと(?)ダメライフを送っている設定です。