パラレル
□兄弟 W
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呼び出し注意
『ザンザスが他校の不良に呼び出された』
その情報が綱吉に届いたのは、綱吉が丁度これからお昼にしようという時だった。
半端に持ち上げられた弁当の蓋を、しぶしぶ元の位置に戻す。
溜め息ひとつ。
「…………ごめん、それ、いつの話? 」
……まったく、まだそんな無謀な奴がこの町にいようとは。
怪訝そうにするクラスメイトから、なんとか誤魔化して時間と場所を聞き出すと、綱吉はすぐに席を立った。
ザンザスを助ける為に行くのじゃない。
ザンザスが人殺しになる前に、止めるために行くのだ。
なんたってアイツは、手加減というものを知らない。
「あぁもう……、めんどくせー」
パタパタ階段を降りて、昇降口を抜ける。
聞いたところによると、ザンザスが呼び出された場所は、学校から5分程離れた所にある公園らしい。
公園といっても、脇の方に申し訳程度にブランコが設置された、ほぼ空き地の様な場所である。
しかも、裏通りに面している為、人通りもほとんど無い。
喧嘩するにはもってこいなんだろう。
走りながら、ポケットを漁って二つの柔らかい物体を取り出す。
手袋だ。
さてこの手袋、ただの手袋と侮るなかれ。
これこそ、沢田家に昔から受け継がれる"イクスグローブ"なるものなのだ。
身に付けることが出来るのは、代々沢田家の血を引く長男と決まっている。
つまり、今現在は綱吉のみが扱える、大変貴重なものなのだ。
ただのホカホカ手袋にしか見えないそれを、両手に装着する。
すると、瞬く間に二つの手袋が形を変え、本来の"イクスグローブ"の形になる。
「よし……」
眼鏡をかけたり外したりすると、性格の変わる人がいる。
綱吉にとって、それがイクスグローブだった。
目が据わっている。
「……ザンザスを矯正するまでは、死んでも死にきれねぇ」
呟くと、綱吉は地面を蹴る足に更に力を込めた。
END
毎回こうしてツナがザンザスを教育しに行きます。