ささげもの
□6000HITリク
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疲れた時や、気を紛らしたい時。
故郷を思い出した時や、寂しくなった時。
〜なつかしい音〜
「〜♪〜〜〜♪〜♪♪」
仕事を片付けながら口ずさむのは、いつも決まって故郷の歌だった。
歌った後に、日本を思い出して しんみりしてしまうのは分かっているくせに、ついつい口から出てきてしまう。
「〜♪〜♪〜〜〜♪」
山積みの書類は一向に減る気配が無いけれど、明るい曲を歌えば、気持ちが少し浮上した。
確認し終わった書類の束を机にバサッと置くと、何枚かの紙がヒラヒラと床に落ちた。
「〜♪」
拾おうと腰を屈めると、急に上から影が落ちてきたので、なんとなしに顔を上げる。
「……ドヘタクソが」
瞬間、心臓が止まるかと思った。
「っ、げほっ!!!
は!?、ざ、ザンザス……!!?
……ってか、今の、聞いて!!?」
わたわた慌てる綱吉とは対照的に、ザンザスは全く表情を変えないまま、数枚の紙をズイッと差し出した。
「この間の報告書だ」
「あぁ、うん、ありがとう!……って、無視かよ!!?」
勢いで突っ込んでみたが、相手が悪かった。
お笑いの精神をカケラ程も理解していないような奴である。
はんっと鼻であしらわれてしまった。
「入ってきた気配にすら気付かないテメェが悪ぃ」
「う…」
くやしいが、全くもってその通りなので、反論ができない。
恥ずかしいし、仕事は増えるし、ふんだりけったりである。
大きなため息をついた後、綱吉は、今受け取った書類を、紙の山の頂上に重ねた。
「、また徹夜かよ…」
しかも、徹夜したからといって終わるもんでもないということを、綱吉は既に身をもって知っていた。
「はぁ……。……あれ?ザンザス?どうしたんだよ、まだ何か用あんの?」
もう帰るもんだと思っていたザンザスが、いまだに怖い顔をしたまま綱吉を凝視している。
いつもは用事が済むとさっさと帰ってしまうくせに。
それによって、実は毎回ちょっと淋しさを感じていたなんていう事は、トップシークレットである。
そんな乙女な事を考えていたなんて、いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「…………さっきの、日本の歌だったな」
さっきから押し黙っていたザンザスが、ようやく口を開いた。
「え?、あぁ、そうだけど、それがどうかした?」
顔を見返すと、フイと逸らされた。
なんだそれ。
そっちが聞いてきたんだろ。
相変わらず逸らされた顔を、視線で攻撃してみる。
「…………………。
……帰りたいのか」
じぃっと、ザンザスを睨みつけることに精一杯だった綱吉は、一瞬、声を掛けられたことに気付かなかった。
「あ、…え?」
ポカンとしていると、苛立った様子のザンザスがこちらを振り向いた。
「帰りたいのか」
…同じことを繰り返されても、何を言っているのかサッパリわからない。
いくら言っても通じない綱吉に焦れたのか、かなりイライラし始めたらしきザンザスは、コツコツと大股で近寄ってくると、綱吉の胸ぐらを掴んで、グイと引き寄せた。
「ぐぇ、おい、ザンザ…」
「日本に、帰りたいのか」
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