SHORT U
□側にいたい
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※「再会」の続き
※ぬるいですが性描写アリ
ザンザスに連れて来られた先は、決して綺麗とは言い難い、歴史を感じさせる様なレンガ造りのアパートだった。
ただ、建っている場所が丘の上だった為か、窓から見える景色は絶景だった。
「うわー……。街がミニチュアみたいだ……」
「おい、あまり身を乗り出して落ちるなよ」
荷物をテーブルに置きながらザンザスが注意する。
「はいはい」、と返事は返ってきたものの、綱吉は相変わらず危うい姿勢のままだ。
浅くため息をついてから、ザンザスは綱吉に近寄った。
「おい―――」
「ねぇザンザス、」
視線は外に向けたまま、綱吉が声を掛ける。
ザンザスはちょっと眉を寄せた。
「なんだ」
綱吉の後頭部が微かに揺れて、彼がうつむいたのだとわかる。
窓のヘリにのせられた手には、その指先が白くなるくらい、力が込められていた。
「……ザンザス、はさ、まだ、俺のこと……その……好き?」
その声が、あまりにも弱々しくて、ザンザスは胸が痛むのを感じた。
けれど正直、何と答えたら良いのかわからなかった。
自分は一度、綱吉を捨ててきた。
その事に後悔はない。
あのままだったら、自分はいつかきっと、綱吉を壊してしまっていた。
どす黒い独占欲だけが渦巻いていて、今も、それが完全に無くなったとは言えなかった。
重苦しい沈黙が部屋に充満する。
先にそれを破ったのは、綱吉だった。
「……なんで。なんで黙って出ていったんだよ……っ!」
勢い良く振り返った綱吉は、今にも泣き出しそうだった。
その顔に固まって動けないでいると、いきなりドスンと突進される。
「…………!」
ぶつかる、と思ったのだけれど、予想に反して、倒れた場所はボフンと柔らかかった。
ベッドに落ちたのか、と少し経って理解する。
上を見上げると、切羽詰まった様子の綱吉がいて、まぁつまり、綱吉に押し倒されたようだ。
「ザンザス……」
熱っぽく名前を呼ばれて、そのまま口付けが降りてくる。
懐かしい感触に、クラリと理性が傾いた。
けれど、綱吉の為を思うなら、今ここで拒まなければならない。
また同じことを繰り返しては、意味が無いのだ。
―――そう頭ではわかっているはずなのに。
心底惹かれている自分を、ザンザスはもう抑えきれなくなっていた。
そっと、綱吉の髪に手を差し込むと、小さな頭がピクッと震える。
薄茶の目を覗きこみながら、唇を軽く食むように口付けると、その目が大きく見開かれて、次に、切なそうに細められた。
「ザン―――」
「綱吉、どうなっても、良いんだな」
「…………、ん」
綱吉が小さく頷くのを見て、ザンザスはその肩を掴むと、グイとベッドに押し付けて場所を入れ換えた。
綱吉と目線を合わせる。 そっと綱吉の唇が動いて何かを呟いたが、それは音にはならなかった。
ザンザスはニヤリと笑って、「聞こえねぇよ」、と耳元で囁く。
綱吉は不満げな顔をしたが、少し視線をさ迷わせてから、軽く上体を起こすと、ザンザスの耳に口付けるようにして、もう一度、同じ言葉を繰り返した。
「……抱いて」
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