SHORT U
□朝が来て、それから
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目が覚めると、いつものベッドにいた。
―――ねむい……
もう一度寝直そうと寝返りをうつと、腰を中心に鈍い痛みが広がって、綱吉は顔をしかめた。
「……っ」
あぁ、アレは昨日のことなのかと、今さら気付く。
朝方に寝たせいか、時間感覚がちょっと狂っていた。
ついさっきのことの様にも思えれば、随分前の出来事の様にも感じられた。
ふと右手を目の前に翳すと、手首には赤くしっかりと手形が残っていて、アレはやっぱり、ついさっきのことだったのだなぁと考える。
不思議と、ザンザスを憎む気にはなれなかった。
ただ、最中の苦しげなザンザスの顔だけが瞼の裏にこびりついて、どうしてもとれなかった。
チリッと胸が痛む。
「……起きたのか」
「え……」
声と一緒に、目の前が真っ白になった……というのも、つまんでみるとソレは綱吉のワイシャツだった。
「……リボーン」
「さっさと着ろ。いつまで素っ裸でいる気だ」
言われてみれば、確かに自分は何一つ身につけていなかった。
素直に投げられたシャツの袖に腕を通しながら、ふと思い浮かんだ疑問を投げ掛ける。
「体……リボーンが処理してくれたのか? 」
途端、リボーンの右眉が、綱吉にしかわからない程度にピクリと反応を返した。
しまったと思うが、今さらどうしようもない。
「……だったらどうした」
「いや、どうっていうか……」
「ごめん」とだけ呟くと、フンと鼻で返された。
そうしてそのまま、部屋の入り口へと向かってしまう。
「あ、ちょ、リボーン! 」
リボーンの、ドアノブに伸ばされた手が中途半端な位置で止まった。
面倒くさそうな顔が振り返る。
「何だ」
つい呼び止めたはいいものの、何と言って良いか分からなくて、綱吉は口ごもった。
「や、あの……その、何があったのか、とか……聞かなくていいのか……?」
ピリリと、リボーンの殺気が感じられた。
見ると、彼の顔はこれ以上なく完璧に無表情で、だからこそ、リボーンがどれほど怒っているのかが伝わってきた。
うっすらと汗ばんだ手で、ギュウと布団を掴む。
その激しい怒りに固まった綱吉を見下ろしながら、リボーンが低い声を出した。
「……なんで俺が、お前の口から、あのカス野郎の弁明を聞かなきゃならねぇんだ」
どこか頭のすみで、ギクリとする。
そうと意識していたわけではなかったけれど、確かに綱吉は、自分にも非があったのだと言おうとしていた。
リボーンの、あからさまにわざとな溜め息が聞こえる。
はっきりそうと言われた訳ではないのに、ものすごく責められている気がして、綱吉はベッドの上で身体を縮こまらせた。
リボーンがしっかりこちらを振り向いて口を開く。
「……お前の甘さは、ボンゴレに必要だ。
だがな、自分の身に危険を感じた時くらい、それは捨てろ。……いいな」
リボーンの真っ黒な目はどこまでもどこまでも深くて、綱吉に反論を許さなかった。
しかも、綱吉が了承するまで部屋に居座る気らしく、じっと上から綱吉を凝視してくる。
その視線に耐えかねて小さく頷いた綱吉の頭の中には、やっぱり苦しげなザンザスの顔があって、やっぱり胸が痛んだ。
END
続編なんて作るつもり無かったのに、なんかいきなり思い浮かんだのでアップ。
しかも、なんかまた続きそうな雰囲気じゃないれすか?(←※書いた人)