SHORT

□携帯電話
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 春が来て、こんな自分も、なんとか高校に入学することが出来た。

 入学祝いにと、親が携帯電話をプレゼントしてくれるというので、一緒に選びに行った。
あれやこれやと迷った末に、結局、紺色のシックなデザインのものに決めた。
リボーンには地味だと笑われたけれど、自分では気に入っているので良しとする。

 家に帰ってきて、袋から取り出した携帯は、ツルンと綺麗で、なんだか自分にはあまり合わないような気がした。

 説明書を見ながらウンウン唸りつつ、やっとのことでメールアドレスを設定するページを開くことが出来た。
 入力する画面が出てから、そういえばまだどんなアドレスにするか決めていなかったことに気がつく。

 どうしようかと考えて、そうだ誰か他の人のアドレスを参考にしようと思いつく。
ポケットに手を突っ込むと、そこには、携帯買ったら是非一番に登録して下さいと言って、自称右腕から渡されたメモ紙が入っていた。

カサカサ開いて読んでみる。
まず自分の名前が入っていたことに驚いた。
そういえば、俺のアドレスには尊敬しているお方の名前を入れたんですと得意げに話していたような気がする。
ちょっとげんなりして、メモ紙をテーブルの上に伏せて置いた。

 改めて携帯電話に向き直る。
まあ、ちょっとアレだったけれど、とりあえず参考にはなった。
 尊敬する人の名前なんかを入れるといいのか。
じゃあ、家族の名前とか、友達の名前とか……好きな人の名前なんかでも、良いのだろうか。
ふと頭の中に思い浮かんだ人物の名前に、綱吉は一人で赤くなった。

 一旦試しに入力してみて、やっぱり恥ずかしいと削除する。
今のは忘れて他の候補を考えようと思うのに、一度浮かんだ案は、なかなか消えてくれない。

 散々悩んだ結果、彼の名前に含まれる、二つのアルファベットを入れようという結論に辿りついた。

 カチカチ打っては消し、打っては消し、最後に出来上がったアドレスから彼の名前を連想することは、まず不可能だろうというものに仕上がった。
……自分を除いては、だけれど。

 決定を押してから、ふぅと後ろに倒れこむ。

 冷静になってみると、何馬鹿なことしてんだろと思ったが、なんとなく、もう一度アドレスを訂正する気にはなれなかった。

 顔の前に携帯を持ち上げて、アイツには、絶対アドレス教えられないなと一人呟いた。



END



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なんか突発で書いてしまった携帯話。
セリフがありません。

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