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□ブカブカシャツは、ロマンです
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ブカブカシャツは、ロマンです



 目が覚めた。
 といっても、そんな急にバッチリ覚めた訳じゃない。
 ぼんやり靄のかかったような覚め方だ。
 あぁ起きたくないな、と思う。
 ゴロリと寝返りをうった。
 寝たりはしないから、と胸中で誰かに言い訳しながら目を閉じる。

―――あぁ起きたくない


 昼間は、次々と持ち込まれる問題と書類の山に悩まされ、夜は発情した恋人に貪られる。

 身体が持たない、と思う。

「……あいつ、ちょっと勘弁してほしい」

 人を散々好きなように扱って、しかもそのまま置き去りだ。
 今日も、隣に彼の姿はない。

 あっちもあっちで、忙しい身なのはわかってる。
 それでも落胆してしまうのは、どうしようもなかった。

 なんだか胸が苦しい。
 苦しさに目を開けると、今度はわりかしハッキリと目が覚めてきた。

 あまり気持ち良くない目覚めだ。

 ゆっくり身体を起こし、軽く頭を振る。
 ベッドから床に足を下ろすと、ひやりとしていた。 足早にカーテンへ向かい、一気にひく。

 朝日に目を細めながら、そこでようやく、あれ、と違和感に気付く。

 着ているシャツの、裾が妙に長い。
 というか、幅とかなんとか、全体的に、デカイ。

「これ…俺のじゃない…」

 なら誰の、なんてわかりきった疑問が頭に浮かんだ。
 少しして、かぁ、と頬が熱くなる。

 彼が、着せて出ていったのだろうか。
 わざわざ。

「〜〜〜〜〜…っ!!」

 思わずその場にしゃがみこむ。
 あの仏頂面でちまちまボタンを留めているところを想像して、あいつ馬鹿じゃないか、と考える。

―――あぁもう、可愛すぎる…

 この世でザンザスを可愛いなんて表現出来るのは綱吉くらいのものだろうが、本人は気付かない。


「…あんの、むっつりスケベ」

 呟いて、綱吉は小さく笑った。

 胸の苦しみは、いつの間にか消えていた。



END


綱吉には是非ザンザスのシャツを着てほしいと、常日頃考えています。

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