SHORT
□ベイビーパニック
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綱吉の話を要約すると、こういうことらしい。
『跡継ぎに困った重役たちが、ボンゴレクオリティーをフルに活用して、綱吉の赤ん坊を創ってしまった』
そんな馬鹿な話があるか、と思う。
だが実際、綱吉の腕には、綱吉によく似た赤ん坊が抱かれている。
凝視していると、振り向いた赤ん坊と目があった。
―――赤目。
途端に、赤ん坊がバタバタと暴れだす。
「わぁ、こら、暴れないで、コイツ慣れれば恐くない…よ? 」
なんで疑問系なんだ。
「一応お前のお父さんだし」
お父さん………?
「…………あ゙? 」
「あれ、言わなかったけ、一応コイツには、ザンザスの遺伝子も含まれてるんだよ」
―――言ってねぇよ。
「科学班の人たち、絶対ブリーダーかなんかになった気持ちでいるよなー…」
最強の赤ん坊ができたーとか言ってたし、と綱吉がため息をつく。
腕の中の子供が、それを心配そうに覗きこんだ。
綱吉が気付いて微笑む。
「あぁ、ごめんな、大丈夫だよ」
いやに子供の扱いに慣れている。
慈しむような笑顔は、まさに母親だ。
「…おい、綱吉」
「……ん? 」
うとうとし始めた赤ん坊を揺すってあやしながら、綱吉が振り向く。
「…俺が、父親でいいのか」
「え、別に母親がいいならそれでも…」
「そうじゃねぇこのドカス」
綱吉がきょとんとした顔をした。
ザンザスは目線を逸らす。
「…俺で、いいのかって聞いてんだ。」
「ザンザス……」
横顔に、綱吉の視線を感じた。
赤ん坊が、だぁ、と唸った。
「……ザンザス"で"、良いんじゃない、ザンザス"が"、良いんだよ」
振り向く。
さっきと同じ笑顔の綱吉と目があった。
「…父親殺しを企むような奴が良いのか」
綱吉の笑顔は変わらない。
「俺、今のお前を信用してるからさ」
綱吉が近づいてくる。
赤ん坊を差し出された。 思わず目を見開く。
「ほら」
早く、と言う綱吉から、そっと赤ん坊を受け取る。 だが受け取ったは良いものの、その後どうして良いのかわからない。
赤ん坊も緊張しているのが伝わってきた。
身体をこわばらせている。
「おい、綱吉…」
不安になって綱吉を見る。
綱吉は笑っていた。
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