ザン様ハピバ記念
〜誕生日まであと一日〜
「……言えるかっつの、あんなこと」
ブチブチ呟きながら、綱吉は町に繰り出していた。
ちなみに、今日のこの休みを勝ち取る為に、昨日死に物狂いで仕事を片付けてきたのだ。
目の下の隈は仕方がない。
「……これ、とか似合うかな」
ふと目についた、幅の広いシルバーリングを手に取る。
アクセサリーなんてありきたりかとも思ったが、貰って困るようなものでもないだろうと思い、綱吉はまずシルバーアクセの店へ来ていた。
店内で明らかに浮いているのは、我慢することにする。
細かい装飾の施されたソレは、確かにザンザスに似合いそうに思われた。
が。
「……そういや俺、アイツの指のサイズわかんないや」
がっくりと項垂れて、リングを元の位置に戻す。
その後も、しばらく店内を見て回ったけれど、どうにもピンとくるものが無い。
大切な相手だからこそ、プレゼントに妥協はしたくなかった。
「はぁ……アイツが欲しいものって、何だろう……」
綱吉の脳裏に、かつて敵通しとして戦ったザンザスの姿が思い浮かぶ。
―――ボスの座、か……
「……いやいやいやいや! それはさすがに無理だろ! 」
いきなり叫んだ綱吉に、周りにいた人達の視線が集まる。
結局、恐縮したまま、そそくさと店を出た綱吉の頭に、昨日のリボーンの台詞が蘇った。
『ザンザス、俺をもらっ―――』
「い、言えるかぁぁっ!! 」
再び集まった視線を気にすることが出来るほど、綱吉に余裕はなかった。
つづく