ザン様ハピバ記念
〜誕生日当日〜
予想外の事態とは、いつでも起こりうるわけで。
「……ごめんスクアーロ、もう一回言ってくれる? 」
「……あ゙? だから、ボスなら任務で明日まで帰らねぇぞ、って―――」
「俺、聞いてないけど」
「……そりゃあそうだ。言ってねぇからな」
茫然と立ち尽くす綱吉を、スクアーロが不思議そうに見る。
「なんだ、なんか用だったのかぁ? 」
項垂れる綱吉の頭を、スクアーロがぐしゃぐしゃと撫でた。
どうやら、完全に子供扱いされている。
この様子を見る限り、ヴァリアーの人達も覚えていないのだろうな、と思った。
「……今日、ザンザスの誕生日……」
「……あ゙」
「すっかり忘れてたぜぇ」、と、スクアーロはなんでもないことの様に言い切った。
が、綱吉には大したことなのである。
自分がここに来るまで、一体どれほどの覚悟をしてきたと思うのか。
結局プレゼントは決まらないし。
もう本当に、自分を贈るしかないのかと、朝っぱらから念入りに身体を洗ってきたのだ。
めちゃくちゃ恥ずかしかった。
……それなのに、受けとるべき相手がいないなんて。
「綱吉……? 」
「……、スクアーロ」
「な、なんだぁ?」
「ザンザス、今、どこ」
「いや、だから任務に―――」
「それ、どこ! 」
こうなったら、何がなんでも受け取って貰わなければ、綱吉の気が済まない。
絶対に今日中に渡してやるぞと決意して、綱吉は、スクアーロが大急ぎで手配してくれた飛行機の切符を握り締めた。
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簡単すぎる仕事だった、と、ザンザスは一人ホテルへ向かっていた。
夜中の仕事だった為、道で人とすれ違うことは滅多にない。
時刻は零時ちょっと前。
予定では、明日の昼の便でイタリアに帰ることになっている。
と、急に背後から視線を感じて、ザンザスは咄嗟に振り返った。
「……誰だ」
暗闇に向かって問いかけると、ややあって返事があった。
「ザ、ザン、ザス……? 」
その、ここにいる筈のない人物の声に、ザンザスは目を見開く。
「……綱吉? 」
まさかと思ったが、街灯に照らし出された姿はやっぱりどう見ても綱吉で、ザンザスは訳が分からなくなる。
「テメェ、どうしてここに―――」
「誕生日おめでとう! 」
「……は? 」
誕生日。
そうか、今日は自分の誕生日だった。
すっかり忘れていた。
しかし、それにしても。
「あと一分ある……、ギリギリセーフだ……」
「……おい、まさか、それを言う為だけに来たのか」
仕事はどうした。
ザンザスが顔をしかめていると、焦った綱吉の声が聞こえてきた。
「ち、ちがっ! ち、ちゃんと、プププ、プレゼントも持ってきたんだって! 」
暗くても、そうとわかるくらい真っ赤になった綱吉に、ザンザスは首をかしげる。
「何だ」
「いや……その……あぁ、くそ! "俺"、もらえよ! 」
「あ゙? 」
「だ、だから! お、俺が、その……プレゼント、なんだよ……」
よほど恥ずかしいのか、綱吉は次第に俯きはじめてしまった。
……つまり、こういうことか。
『俺に抱かれに来た』
そう言うと綱吉はさらに赤くなったが、否定はしなかったので、その通りなのだろう。
笑いが抑えられずにいると、変態、と責められた。
「俺に抱かれるためにはるばるイタリアから日本まで来たテメェは、変態じゃねぇのか」
「う……」
華奢な腰を抱き寄せると、綱吉の身体が緊張するのがわかった。
耳に唇を寄せると、細い肩がピクリと震える。
まったく、いつまで経ってもウブな奴だと、おかしくなった。
「朝までたっぷり痛ぶってやるよ」
「……ザンザス、それ、違う」
誕生日を待ち遠しく思えるようになったのは、綱吉のおかげだった。
おわり
な、なんとか今日中に完成しました。
終わらないかとめっさ焦りました。
なので内容が割と急ぎ足です。
ダメダメじゃん。
ザン様は日本での仕事だったようです。
あ、それから、おまけなんてものも用意してみました。ザン様が綱吉にベタ惚れです。