ツナたんハピバ記念
〜嫉妬にも限度があるよ〜








「ザ、ザンザス、お、落ち着こう、うん、まずはさ、落ち着いて話を―――」
「ウルセェ」

 バキッと音がしたと思ったら、顔の隣の壁にザンザスの拳がめり込んでいた。

 綱吉は声も出せない。

「綱吉、てめぇ、これは何だ」

 これ、と言って、ザンザスは綱吉の首を掴んだ。

「い、いや、だから、ザンザスが付け―――」
「そんなんで誤魔化しきれると思ってんのか」
「う……」

 綱吉はザンザスの目に弱い。
 これも惚れた弱みとやらに当てはまるのだろうか、ザンザスにまっすぐ見つめられると、綱吉は、小さな嘘すら彼につけなくなってしまうのだ。

「ご、ごめん……」

 素直に謝ると、何故か、ザンザスの機嫌は良くなるどころか、一気に急降下した。

「……ハッ、浮気を認めんのか」
「……は? 何言―――」
「俺を裏切ってただで済むと思うな」
「ちょ、ザン……」

 声を掛けるより早く、綱吉はぶん投げられていた。

 は、と言う間に、目の前に壁。

 激突。

 ドカンと有り得ない音がして、目を開けると、綱吉は瓦礫の上にいた。
 もくもく粉が舞って、ケホケホとむせてしまう。

「う、げほっ……、あ、ありえねぇ」

 リボーンのスパルタ修行の甲斐あってか、綱吉に外傷はほとんどない。

 がしかし、建物の方はそうもいかなかった

 常日頃から爆発やら癇癪やらでしょっちゅう破壊されているこの部屋だが、ザンザスが暴れたら、部屋の一つや二つでは済まないだろう。

 リボーンめ、と心の中で文句を言ってみるが、そのにっくき人物は、今ここにいない。
 きっと今頃、コチラの苦労を思い浮かべて笑いながら、パーティーの最後に出される、でっかいケーキでも食べているのだろう。

 まったくアイツは、とんでもないものをプレゼントしてくれた。
 俺が昨日あげたコーヒー豆セット返せ。

 綱吉が家庭教師に思いを馳せているうちに、ザンザスが煙の中から現れた。
 赤い目がギラリと光って、まじで恐ろしい。

「……綱吉、テメェには死んで償ってもらう」
「は!? いやいやいやいや、だから、これはリボーンの……! 」
「相手はあのアルコバレーノか……」
「話聞けよ! 」

 どうやら完全に頭に血が昇っちゃってるらしいザンザスには、何を言ってもダメらしい。

 ビュオンと飛んできた蹴りを間一髪で避けながら、綱吉はやっと理解した。

 ため息をつき、ポケットから、常備してある手袋、もといイクスクローブを両手にはめる。

 目を閉じてエネルギーの流れを捉えると、一気に放出して炎をともした。

「……誤解で殺されたら、死んでも死にきれねぇ」




***********



 綱吉の必死の頑張りの甲斐あってか、ザンザスの被害は部屋二つまでに抑えられた。

「……だから、何度も言ったけど、これはリボーンのいたずらで、浮気じゃないんだって」
「…………」

 ザンザスは、おとなしく話は聞いているものの、何も言わない。
 綱吉に背中を向けたまま拗ねるザンザスは、子供みたいでちょっと可愛い。

「……俺が好きなのはザンザスだけだって」

 苦笑ぎみに言えば、ザンザスがピクリと反応を返すのが見えた。
あと一押し。

「……せっかくの誕生日なんだからさ、ザンザスも祝ってよ」

 後ろから腕を回せば、やや躊躇いはあったものの、結局コチラを振り向いて抱き締めてくれた。
 ようやく安堵のため息をつく。

「……本当だな」
「うん」
「……綱吉、」
「うん? 」
「テメェは俺のだ」
「……うん」
「だからテメェには俺をやる」
「……、は? 」

 思わず顔をあげると、思いもよらず真剣なザンザスと目が合って、綱吉はちょっとたじろいだ。

「俺は一生テメェのもんだ、好きに使え」
「……もしかして、それが誕生日プレゼント、とか言う? 」

 そろりと尋ねると、話のわからない奴だな、という顔をされた。

「不満か」
「……いや、嬉しいけど」
「ならいいじゃねぇか」
「……そうなの? 」
「あぁ」

 「じゃあいっか」、と言うと、もう一度「あぁ」と返された。

 壊れた壁の隙間から風が入ってきて、急に寒さを感じ始める。
 ブルリと震えると、ぎゅうと抱き締められた。

 瓦礫の上から見上げる星空は、とても綺麗に思えた。


「……ケーキ、食いたかったな」



END

 事後処理のことは、忘れているフリをした。


*********

二日遅れ……orz
ははは……(もう笑うしかない)
ちなみに、ツナは薬とか銃弾とか無しで炎を出せるようになってる設定です。
 パーティーに出てた綱吉をザンザスが引っ張ってきた後のお話、みたいな……(聞くなよ)?

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