掲示板
03/22(Sun) 16:02
黒桜・アンリマユ・言峰・黒セイバーとかに好かれます
壱原 紅
「その、ゼロが、多いです…」
隣から途切れ途切れに言われたその数字に少しゾッとする
自分がしでかしたことをこのような形ある数字にされると恐ろしくなる
「そうだね、多いよねぇゼロが
しかもこの沢山のゼロが他の請求書にも沢山あるんだよ…もう沢山、沢山、沢山…ね」
私も、もう沢山です
彼はようやく座り、顔の前でまた手を組む
「…正直、こうなる前に言わなかった士郎にも責任はあるだろうね…でもね、君達にはそれ以上の責任があるんだよ…?」
穏やかさの下にある、底冷えするような怒りが今なら分かる
容赦の欠片も無い底なしの悪意、純粋ゆえの冷酷さが其処にあった
「セイバー、遠坂凛、バゼット・フラガ・マクレミッツ
私は君達が生真面目で(頭ガチガチで)素直で(愚直で)微笑ましいほどに(愚かしいほどに)信念に忠実であることを知っているよ…」
言葉の端々から悪意が所々から漏れ出ている
「だが、今回は流石に、やりすぎだ――――これ以上は、いくら私でも赦せない」
ゾクッ!
彼の気質が変った
今すぐに私達と遣り合っても構わない、否!殺り合う気だ!
正座した状態ではあるが、すぐにでも臨戦態勢が取れるように準備する
「ふむ、戦う気かバゼット……そんな貴方はこんな言葉を知っているかな?曰く『力無き正義は悪と同義だ』と」
そう言って、彼は懐に手を伸ばす
銃か?それとももっと別の魔術器具?!
「ああ、セイバーや凛ならともかく、貴方のフラガ・ラックは私にも通用する数少ない宝具だからな…正直、通用しない相手に足止めぐらいさせないと意味が無いんだ」
その時、彼の手が懐から抜き放たれ、その手から何かが宙を舞った
私の動体視力はそれを捉えた
そう、マタタビを
「猫、まっしぐらぁぁぁぁって!にぎゃぁっ?!」
おかしな掛け声と同時に居間に飛び込んでくる二頭身
ケタケタと笑いながらマタタビに突っ込んだソレの頭を彼は鷲掴みにした
「ああ待っていたよ、ネコアルク…貴方にしか頼めないことがあるから呼んでみたけど案外あっさり来るんだな?」
「にゃにぃ!貴様このアタシをどうする気だ!?」
「大した事じゃないさ、そこの鉄女を逃がさないでくれればいい……マタタビ、欲しいんだろう?」
「う〜ん…突然の事態に戸惑うアタシ…どうしようかにゃ〜…暴力は駄目だし?」
戸惑いながらも拒絶の意思を示す化け猫
そうだ、その通りだ暴力反対
「ふふ…暴力だなんて…違うわ、これはね…し・つ・け♪」
「にゃぁぁぁっ!?真っ黒いのがおる!?」
「言うこと…聞くわよね?」
「聞きます!聞かせていただきますぅ!!」
黒い桜が、その戸惑いを玉砕した
「さて、それでは2度とこんなことをしないようにしないとね?凛は任せるよ桜」
「はい、未来のお兄様vv」
「ライダー…協力よろしく」
「は、はい…」
「ネコアルク」
「まかせるにゃ〜!」
悪夢だ
こんなのは地獄以外の何物でもない
助けを求めようと思わず後ろを向けば
「許せバゼットに嬢ちゃんにセイバー!!俺はまだ死にたくねぇんだ…小次郎が待ってるんだぁぁっ!!」
「ワリィ、マスター…でもシグ可愛いなぁ…いつものが可愛いけどこっちもいい…」
「わぁぁん!シロウ〜〜!バーサーカー!」
「自業自得とは言うけれど、後で金の成る男を此処にやるわ…安らかに眠りなさい馬鹿女さん達」
全力で逃げ去っていく4人の後姿しか見えなかった
「さぁ、覚悟はいいかな?」
ふわり、と笑うその笑顔
優しさすら感じさせるその笑顔はもはや、別人だった
「――――お仕置きの時間だ」
…その後のことは、思い出したくも無い
ただ1つだけ、絶対に分かったことがある
触らぬ神に祟り無し
この国の諺の1つのとおり、決して日頃怒らない相手だけは、その相手の逆鱗にだけは触れてはならないということだ
余談だが、衛宮邸では『赤字』の召喚だけはするなという規律が出来た
そして、恐ろしいことに…シグは、マジギレしている間のことは全く覚えていない事実が発覚したのであった
END
03/30(Mon) 16:21
ちょっとだけ昔話
壱原 紅
それは、本当に気紛れだった
土砂降りの雨の中、真夜中に訪れたのは何故だったかは分からない
ただ……呼ばれたような気がしただけだった
〜雨の中で〜
昼過ぎから降り出した雨は夜になっても止まなかった
何の連絡もなく訪れて、門を通った時、視界に入った傘も差さずに立ち尽くす影が視界の端に入った
いつからそこにいたのだろう―――――――――?
土砂降りの雨の中、見覚えのある人影が立っていた
自分が来たことにも気付いていないのだろう、ただ俯いているその表情は分からない
見知った銀色の髪も服も重たく濡れている
髪だけではない、頬にも雫が伝っている
…涙?
アレが泣く筈がない
しかしいつもとは違う雨に打たれているその姿に、見ているこちらが辛くなるような姿に、思わずギルガメッシュはただその傍らに駆け寄った
バシャリ、という音にふと此方を振り返る青年
その瞳が驚きに染まり
「英雄王!?何で此処に…いや、こんな遅くにどうし…」
「黙れ」
その言葉を遮り、静かな声と共に相手の唇へと口付けた
それは柔らかくて…体温を奪われ冷え切っていた
差していた傘がアスファルトへと落ちるのも気にしない
引き寄せるように腕を捕まれた手は、どれだけこの場に佇んでいたのかを告げるように冷たくて
何が起きたか理解しないままのシグの腕を掴んだまま、湧き上がる苛立ちに任せ更に唇を強く押し当てる
「…な…ぁっ…んぅっ」
抗議の声を上げようと口を開いた隙間からギルガメッシュの舌が入り込んだ
冷たい唇とは対照的な熱を持つ舌が歯茎をなぞり、逃げる舌を絡め、口内を犯す
逃げる舌を、追われ絡められる、強く吸われ、身体の力が抜けていく
崩れ落ちそうになるシグの腰に腕を回し、角度を変えてなお貪る事を止めない
互いの頬に伝わる雨雫
傘も差さずに雨に打たれているのだ
服も既に濡れ鼠なのに、冷たい筈の身体が熱くて堪らない
熱で苦しいのか、口を塞がれていて苦しいのか、苦しくて目の前にある服を空いている手で掴む
その様子にギルガメッシュはやっとシグを開放した
冷たい大気とは別の熱い吐息が2人の間に吐き出される
目の前にあるのは熱を持った赤い瞳
いつもとは違う瞳の色にドキリと胸が高鳴った
「…壊れかけの道化の分際でどこまで我に入り込んでくるつもりだ」
赤い瞳を細め、今まで散々貪っていた唇の端を親指でなぞる
口調とは裏腹に優しい仕草で
シグの答えを期待していなかったのか、ククッと喉を鳴らす
「まぁいい、我は貴様に馴れ馴れしくされる事も許してやれる器量の持ち主だ、寛大なる王の心を有り難く思うがいい」
そして再びシグへと口付けを落とす
今度のそれは触れるだけで直ぐに離れた
「む、流石にこのままでは不快だ…道化、このような行いをしていた以上湯殿の準備は出来ているだろうな?」
と濡れた身体をそのままに勝手に衛宮家の中へと向かっていく我様が1人
「な、っ…何なんだ一体っ!!?///ちょ、それより勝手に家に入るな英雄王!士郎は寝てるんだから起こさないでくれ!!!」
好き勝手にされたまま置いていかれ、慌てて追いかけるシグの叫びが夜の雨の中に響き渡った
――――――ふとした拍子に思い出す
強い雨が降ると、気分が落ちていくように
自分の思い出したくないものまで、思い出してしまう
だから私はこうして雨に打たれる
この身と魂を苛む呪いすら、耐えられるように
大切なものを、不安にさせないように笑っていられるように―――
……もっとも、あの王様には、それが気に入らないようだけれど……な
END
はい、今回更新させていただいたのはギルシグの昔話でした……まだお互い名前で呼び合っていない時ですが、気になってしょうがないという様子の2人…どっちかといえばギル→→←シグみたいな?ここから少しずつ発展していくのですがそれはまたの機会に!それでは長々と失礼しました
☆の付いている部分は必須項目です。