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11/25(Tue) 13:48
緑の字は果物の色
壱原 紅

「む!この唐揚げは私のですよランサー!」
「いいじゃねぇか!まだ結構あるしよ」

この世界でだろうと変わらない、賑やかで楽しい夕食の席

「少しは遠慮した方が良いのではないのか?双方食べすぎだ…」
「確かに、2人ともそんなに急がなくても大丈夫だって…」

出来ればずっと、この穏やかな時間が続けばいいのに

「……凛達がいなくて、良かったな……」

どうして幸せな時間は、長くは続かないんだろう?


君と交わす明日への約束 E-4


2日目の夜がやってきた
でもそこはいつも自分達のいる場所ではない

「お〜…流石だな坊主、美味そうじゃねぇか!」
「そうだな、私もこのような料理は初めて見る」
「あはは…ありがとなランサー、小次郎」

衛宮邸
そこはまだ若い青年が1人で住んでいる家…

「当然です!シロウの料理はとても美味しいのですから!」
「セイバー…君はもう少し落ち着きたまえ、いくら腹が減ったとはいえ…ぐはっ!?」
「ふふふふ…失礼ですねアーチャー?私がまるで早く食事がしたいから急かしているようだと聞こえましたが?」
「くっ…いきなり鳩尾に拳とは…っ!」
「…やめてくれよ、2人とも…お客さんの前で…(泣)」

……訂正、1人ではありませんでした

「すげぇな…見えなかったぞ今の…」
「ふむ、流石は騎士王……見事な正拳だったな」
「褒めるとこじゃないって!!」

『わくわくざぶーん』から帰ってきた弓士コンビとランサー&小次郎
士郎としては女性陣にどう説明しようかなと考えていたのだが、意外にも出迎えたのはセイバーだけだった
凛達は?と聞いてみれば


『新都の方で女性限定のケーキバイキングがあるそうです、私はシロウを1人にするのが…その、心苦しくて…私以外は大河も一緒に、皆楽しそうに向かいました』


との、ことだった

「……けどよぉ、それって……」
「ああ、士郎殿と2人きりで食事をするチャンスだったからであろうな…行かなかったのは」

ひそひそ、と話すランサーと小次郎

「まったく…君はどこかその未来予知ともいえる直感を何に使っているのかねセイバー?大方この未熟者の手料理を独り占めできるチャンスだと思ったのだろうが…」
「なっ!?何を言っているのですアーチャー!!私はそんな…今日がシロウの手作りの唐揚げが出る日だと知っていたわけでは…!!」
「セイバー、何か墓穴掘ってるぞ…」

からかうアーチャー、むきになるセイバー、ツッコミをいれる士郎

「はいはい、じゃあ夕飯にしよう。それじゃあいただきます」
『いただきます』

家主たる士郎の言葉で食事が始まり……冒頭に戻るのだ

「む、この「さらだ」とやらもなかなか…大葉の香りと味がするが美味しいな」
「あ、それこのドレッシングだからだと思う。小次郎結構いい味覚してるんだな…」
「ランサー、そこの醤油を取ってくれませんか?貴方の近くにあるその黒いのです」
「あ、「しょうゆ」?へ〜…変わってんなコレ、真っ黒じゃねぇか」

士郎が小次郎にサラダの話をする
セイバーとランサーが醤油を持って話をする

「ふ…」

そんな光景にどこか嬉しそうな表情をしているアーチャーがいた

「あー食った食った、美味かったぜ坊主!」
「うむ、ご馳走になった…感謝する、士郎殿」
「美味しかったですシロウ、ご馳走様でした」
「ふん、未熟なりにいい味を出していたな」
「はは、お粗末さまでした…若干1名喧嘩売ってるけど」

そんなこんなで夕食は終わり、全員がほのぼの(?)とした空気を漂わせていた

「あ、そうです…シロウ」
「ん?」
「実は、大河がシロウ達がいない間に梨を置いていったそうなのですが……よろしかったら、私が剥きますので食べませんか?」
「梨?…そっか、前セイバーが食べれなかったことを少しは反省してたんだな…いいよ、皆も食べないか?」
「ふむ、ならお言葉に甘えて…」
「小次郎がいうなら俺も」
「私も貰っておこう」

……この、一言がなければ

「じゃあ剥くかセイバー、梨は何処なんだ?」
「私も見てないのですが、確かこの部屋の隣だといってましたが」

そう言って、襖を指差すセイバー
ありがとうと言って、士郎が襖に手をかけ引き開け―――――

ころ…こん

「ん?」

士郎の足に、1つの梨がぶつかった
なんでさ?と何気なく上を見上げて

ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ!!!!!!


って、何か沢山転がり出てきた―――――!!??


『う、うわぁぁぁぁぁっ!!??』

驚く一同、だが梨は止まらない!!!
溢れ出した梨は一気に居間を飲み込み、全員を庭まで押し出していく!!!

「藤ねぇ買いすぎだろ!?部屋がぁぁぁぁっ!!!」
「だあああああ!待て待て待て!?こんなに食えるかぁぁぁっ!」
「多すぎではないのか!?そもそもこの梨はどれだけ転がり出て来ておるのだ―――――!?」
「っ!どうしろというんだこの山は…!コンポートか、ジャムか、タルトにでもすればいいのか…!?」
「素晴らしい…幸せです!大河、貴女に感謝を―――――!!」


…その後のことは、詳しく説明することもないだろう
大量の梨に押し潰された一同が、必死に這い出し梨の処理に追われたのはだけだ

そうして、帰ってきた大河達の手に抱えられていた果物の山に、若干悲鳴を上げそうになった者が数名いただけだ

それが、喜びか恐怖のどちらだったかは……言うまい


――――――これもまた、繰り返される4日間の一夜限りの夢ということで――――――

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11/25(Tue) 13:51
おまけ
壱原 紅

梨の大洪水が発生する少し前

和気藹々と食事を取る士郎達
聖杯戦争の頃では絶対に見れなかっただろうその光景
アーチャーは若干感極まりそうな自分の心情に苦笑してしまう


『士郎、仲良く出来ない人なんていないよ
自分から壁を作らなければ、理解されないって諦めなければ
誰だって――――――絶対に、一人ぼっちにはならないんだよ』


ふわり、と笑う銀の人…いつだって、強かった人の笑顔が思い返される


「…全く、どうして中々…やはり『彼』の手腕には驚かされる…」
「どうしたんだよアーチャー?珍しいな、アンタがそんな顔するなんて…」

小さく笑えば、隣にいた士郎が問いかけてくる
……思えば、この『衛宮士郎』に対する想いを自覚させてくれた最後のきっかけも、『彼』だった

「ん?ああ…何でもないさ」

きょとん、とした顔でこちらを見やる士郎の表情にそう告げれば
ふーん…と納得いかなかったような顔をしていたが、すぐに料理を取り合うセイバーとランサーの仲介に入っていく

「(……ああ、そうだな…きっと叶うさ、その願いは……)」

笑っている小次郎と、楽しそうなランサーの姿を目に納め
アーチャーは『彼』の叫びを思い出す

彼等の、皆の幸せを守りたいと、強く叫んだその声を

「(だから……オレも願うよ)」

だからこそ、今、己も1つの祈りを抱こう

「(消えないでくれ、シグにぃ……)」

自身を犠牲にまでして、自分達を助けようとしている貴方の存在が終わらされないように


「もう1度だけ――――――――貴方と、兄弟として生きたい」


この祈りを――――強く、抱こう

END

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