ラブ&ヒーロー

□2人いっしょなら
1ページ/1ページ


「ねぇ、これ見て」

泉が読んでいたマンガのとある1ページを光に見せた。王子が妹である王女を抱きかかえて、くるくる回しているシーンだった。

「え、可愛い」

真顔で可愛いとつぶやいた光は、泉と顔を見合わせた。2人ともやりたくてしかたない顔をしている。目がキラキラとしていた。少し距離を空けて座っている兄たちを振り返った。

「お兄ちゃん、これやりたい」
「兄ちゃん、これやりたい」

2人は声を揃えて言うと立ち上がって、該当ページをそれぞれの兄に見せた。

「えっ…」

泉の兄出久は少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「は?」

光の兄勝己はめんどくさそうに顔を顰めた。

2人とも妹の要望に応えてくれなさそうだった。

「泉!」

兄たちの反応が微妙だったので、光は広いスペースに走っていくと、振り返って幼なじみの名前を呼んだ。

「光!」

呼ばれた泉はぱっと顔を輝かせると、持っていた漫画を机の上に置いて、幼なじみに向かって突進していった。泉は勢いよくジャンプして、光に飛びついた。光はタイミングよく泉を抱きかかえると、くるくると回り出した。


「どうだ!」

「たのしい!」

面白い!とはしゃぐ泉に楽しくなったのか、光はにやりと笑った。

「もっと回すよっ!」

「きゃ〜!!」

さらに早いスピードで回り始めた光に泉が楽しそうに笑い出した。光も笑い出して、力が抜けたのか、泉を落としてしまった。ぺたんと座り込んだ泉はまだ楽しそうに笑っていた。

「やばい!」

続いて座り込んだ光も声を立てて笑っていた。

「やばい!」

2人は笑いながら顔を見合わせて、やばい!と声を揃えた。一瞬笑いが止んだが、すぐに吹き出してまた笑い出した。

「目ぇ、回った!」

「ね、立てない!」

立ち上がろうとして、また座り込んだ泉は床に寝っ転がった。

「あたしも無理〜!」

光も立ち上がれないようで寝っ転がった。2人はお互いの顔が見えるように体勢を変えると、顔を見合わせてまた吹き出した。笑いが止まらない。
2人同時に起き上がると、兄に向かって両手を伸ばした。

「抱っこ!」
「抱っこ!」

行動と声がまた揃ったことが可笑しくてたまらない。2人は顔を見合わせることなく、またクスクス笑い出した。

ずっと笑っている妹たちに抱っこを求められて、兄たちは一瞬ちらりと隣に座る幼なじみを見やった。

「しょうがねえな」
「しょうがないなあ!」

自分の妹を迎えに立ち上がると、笑みを浮かべて軽々と妹を抱え上げた。
泉も光も嬉しそうにぎゅっと兄に抱きついた。


次の瞬間、2人は兄たちによってくるくる回されていた。

「え、やだ!まって!」

「まだ目ぇ回ってるのに〜!」

抗議するような物言いの割に、泉も光も嬉しそうに笑っていた。
目が回っている妹たちに配慮してか、ほんの数回で兄たちは回るのをやめてしまった。

ぐらぐらする中2人は全身の力を抜いて、兄に体を預けていた。兄の肩ごしに目があった泉と光は、にやっと笑ってからクスクス笑いを堪えた。2人は兄に要望を叶えてもらうことまで想定済みだったようだ。

「まだ笑ってるの?」
「まだ笑ってンのか」

「うん、だってうれしーんだもん!」

また返事が揃って、2人は笑い出してしまった。2人一緒ならいつまでも笑っていられそうだ。いつまでも楽しそうに笑う妹たちに、兄たちは呆れ半分微笑ましさ半分で釣られて笑っていた。


一方、全く入る隙のなかった妹の彼氏たち

「すげぇ楽しそうだ…」
「俺らの出る幕ないな…」
「だな」
「くっ…俺には光をあそこまで笑顔にする技術がねぇ…!」
「俺も、泉をあんなに笑わせてやれねぇ…」

悔しがる2人に兄たちがドヤ顔で振り返った。




--------
とある赤い髪の少女が主人公の王宮ファンタジーの、隣国の王子が妹をくるくるしてるシーンが好きでして…。(わかりますかね?何年か前にアニメ化もしてる漫画です)
それ見てうちの子たちにやってほしいなと思ったんですが、うちのカップルはノリノリで出来ない!
そこで白羽の矢が立ったのが、泉&光の幼なじみペアでした(光の生みの親双様の大発見です)→「一番ノリノリで笑顔でキャッキャするのは光(回すほう)と泉(抱き上げられるほう)ね!!!」
ノリノリで書き上げました。2人がずっと笑ってるだけ。笑うって何回書いたかな。たのしかったー。2人がきゃあきゃあ笑い合ってはしゃいでるのが可愛くって仕方ない!



2021.10.07


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ