ラブ&ヒーロー

□夏祭りに行きたい
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日曜日。
いつものように2-Aの寮を訪ねた。
掃除と昼食を楽しんで、くつろいでいると、一緒にくつろいでいた三奈さんがニコニコしながら私に言った。

「ねぇ、泉。いいこと教えてあげる」
「なんですか?」
「今日、近くでお祭りあるんだよ〜!」
「お祭りですか!」
「そうそう、だからさ…」
「そうとわかれば、急いで準備しなくては!寮に戻りますね!」
「ちょ、泉!」

私は立ち上がって、帰ろうと早足で玄関に向かう。
轟さんが玄関にいた。動きやすそうな服を着て、トレーニングに出かけるようだった。

「轟!泉捕まえて!」

後ろから三奈さんの声がし、轟さんが私に手を伸ばした。腕を捕まれた。

「…!!」

驚いて言葉が出ず、固まっていると、
「あ、わりぃ。痛いか?」
轟さんが謝る。力は緩めてくれるものの、手は離さない。

「い、え…」
掴まれている腕が熱を持ち始める。

「良かった〜!泉、話は最後まで聞いてよ〜」
「す、すみません!」
「でね!お祭り、轟誘ってみたら?って思ったんだけど…。轟!夕方、祭り行ってきなよ!」
「…夏祭りか?」
「そうだよー!ね泉、どうよ?」
三奈さんはニヤニヤ笑っている。

「…あの、どうですか…?お祭り、一緒に行きませんか……?」
轟さんは考えている。

「お兄ちゃんとかも誘って……」
迷っている顔を見たら、無意識に言ってしまった。
……私の馬鹿。私の意気地なし!
お兄ちゃんを餌にしてしまった。

「…行く」

心の中でガッツポーズをする。
ありがとう、お兄ちゃん!!
ごめんね、お兄ちゃん!

「良かったじゃん、泉」と三奈さんが楽しそうに肘でつついてくる。

「じゃあ、16時にここ集合ね!」
と三奈さんが言った。
「ああ、わかった」
「了解です」
「……ところで!轟はいつまで、泉を捕まえてるつもり?」

三奈さんはまだ楽しそうだ。
轟さんにしっかりと握られている、自分の腕を見た。恥ずかしさで爆発しそう。

「わりぃ、芦戸が捕まえろって言ったから」
腕から手を離した。

「…あとでな」

轟さんは私の頭をぽんと撫でると、トレーニングをするらしく外へ行ってしまった。その姿を見送りながら、撫でられた頭を触った。
「撫で、られた……」

突然の出来ごとについていけてない。
隣に立つ三奈さんはやっぱり楽しそうだ。

「私、帰りますね…。自主トレと準備がありますので……」

寮を出て、すぐにお兄ちゃんに電話をかける。

「どうしたの?」
優しいお兄ちゃんの声に安心する。

「今日お祭りあるんだって!夕方行こうよ!」
「祭り?」
「うん、近くであるんだって。三奈さんが教えてくれた!」
「そうなんだ。…あ!轟くんも誘う?」
「実はね、今誘ったとこなの。お兄ちゃんも誘うから、行きましょうって…。16時に2-Aの寮集合だって!」
「わかった、楽しみにしてるね」
「じゃあ、またあとでね!」

電話を切る頃には、自分の寮に着いていた。中に入り、共有スペースにいるクラスメイトに声をかけた。

「光がどこにいるか知ってる?」
「部屋だと思う」
「そっかー!ありがとう!」
お礼を言い、光の部屋に急ぐ。


コンコン

「光ー!泉だよー!」
声をかけて、すぐ扉が開いた。

「今日お祭りあるんだって!行こ!」
「え、行く!」
とりあえず部屋に入りなよと促され、中に入った。すぐにベッド前の定位置に腰をかけた。

「浴衣着ようよ!実家から持ってきてるよね?」

夏休みに一度実家に帰ったときに、機会があるかもしれないから、持ってきてね!!と何度も念押しして、持ってきてもらった。

「持ってきてる!」
「やっぱり持ってきて正解だったね!浴衣はOKね。お祭りね、三奈さんが教えてくれたの。轟さん誘えばって」

光が「ん?」という顔をした。たぶん、三奈さんが誰かわかってない。

「個性酸の芦戸三奈さん。黒目の」
そう言うとああ、あの人と思い出したようだった。ほんと、かっちゃんに似て他人に興味ないんだから…。

「で?」
「…お兄ちゃんも誘うから、って言ったら、行くって言ってくれた!」

「……泉…」
呆れたようにため息を吐いた。

「光?」
「意気地なし。いや、うん、2人きりになるのも嫌なんだけど。…待って。じゃあ何。クソ舐めプ野郎も一緒に行くわけ?」
「そうだけど。…光がいなきゃつまんないもん」

頬を膨らます。
轟さんを舐めプ野郎と言うのはいただけないけど、光がいなければつまんないのは本当のこと。

「頬を膨らませても、可愛いだけだよ泉」
「お兄ちゃんもいるし、光も行こう?」
「もちろん行くよ。泉は私が守る」
「守るって何から!」
「変な男から」

光はいたって真面目だ。

「守ってもらうほど弱くありませーん!」
可笑しくて2人してケラケラ笑った。



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