ラブ&ヒーロー

□妹は浴衣が着れない
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「助けて!かっちゃん!!浴衣着付けて!!」

浴衣を胸に抱いて、2-Aの寮に半泣きで駆け込んだ。かっちゃんは私を頭から眺めて低い声で言い放つ。

「……自分でやれ」

「間違えた!帯よ、帯!」
「泉、君ね、女の子なんだから、異性に頼むのはやめた方が…」

丁度近くで会話を聞いていたお兄ちゃんが話に入ってきた。お兄ちゃんは呆れた顔をしていた。

「かっちゃんは異性じゃないでしょ!お兄ちゃんだよ?!」
「妹のちんちくりんな体なんぞ興味ねぇわ」
「君たち。血繋がってないでしょ?!」

毎度のやりとりなので、お兄ちゃんのツッコミはスルーする。


「ねぇ。かっちゃん、お願い!可愛い妹のお願いだよ!」
「…ハァ…」
ついてこい。と歩き出す。

「どこで着替えるの?」
「部屋」
「着替えてる時は外にいてくれるんだよね?」
「当たり前だろ。いくら妹といえど、それぐらいの恥くらい持て」

「男の部屋に女子を……!」
「やめろ、峰田。殺されるぞ」



「出来たよ〜」
浴衣の着付けはなんとなく出来る。合わせやお端折りも作れる。のに、帯は出来ない。

「ここまではなかなか上手く出来てんじゃねぇか」

部屋に入ってきたかっちゃんは浴衣を着付けた私を褒めてくれた。

「そうなの。ここまでは上手に出来るの」

帯をぐるぐる巻いて。結ぶ。
すごい。めちゃくちゃ上手だし、綺麗!早い!かっちゃんってなんでも出来ちゃうんだもん、すごいなぁ!

「…苦しくねぇか?」
「うん。大丈夫。可愛いやつにしてね」
「わかっとるわ」

「すごい、早い、綺麗!可愛い!」
「たりめーだ」

かっちゃんは優しく笑う。こういう笑顔に弱い人もいるんだろうな、と思う。……とは言え、こんな表情は妹にしか見せないか。私にとってはもう完全にお兄ちゃんでしかないけど、いつかかっちゃんも好きな人と……?

「かっちゃんにも恋人が出来るかもしれないんだよね…」
「さぁな。…泉、髪飾りあるんか?」はぐらかされた。
「うん、あるよ。これから頑張ろうかと…」
「貸せ。やってやる」
「ありがとう〜〜!!さすがかっちゃん!泉のかっこいいお兄ちゃん!」

かっちゃんは、私から髪ゴムやらヘアピンやらを受け取ると、ささっと三つ編みを作り、サイドでおだんごにしてくれた。髪飾りもつけてくれる。

「これ、去年光己さんがやってくれた髪型だ!さすがかっちゃん。」
フンっと鼻を鳴らす。

「それじゃ、お祭り行こ!」
「は?」
「クラスメイトと行くんじゃねぇのか」
「お兄ちゃん達と行きたいの!」



「まぁ、素敵な浴衣!」
共有スペースに降りていくと、お姉さんたちがいた。

「本当ね、可愛いわ。泉ちゃん。」
「ありがとうございます!皆さんも一緒にお祭り行きませんか?」
「お祭り……!」
百さんの目がキラキラ輝き出す。

「では、早速みなさんの分の浴衣を創りますわね!」

言うやいなや、浴衣を創造し始める。間近で創造が見られるなんて、すごい……。

「ところで、着付けは自分で?」
「帯だけ、かっちゃんにやってもらいました!ちなみに髪型もです!」
「おお…!さすが爆豪くんや…!」


「男子も一緒にお祭りいこーよ!」
「そうだなァ!」
「轟くんも一緒に行く?」
「一緒に行きましょうよ、お祭り!」
「……行ってもいい。」



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