ラブ&ヒーロー

□お誘い
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おまけ

結局一緒に入ったお風呂では、お腹がぐうぐる鳴るたびに焦凍さんに笑われてしまった。焦凍さんはさっとシャワーを浴びて、ご飯を温めておくと先に出てしまった。

「泉はゆっくり浸かってていいからな」

扉の向こうの焦凍さんの影に、さっきまでぴったりくっついていたせいで、私は少し寂しくなった。


「もうちょっと浸かったら、すぐ出ます!」

明日焦凍さんを見送ってから、もう一度ゆっくり湯船に浸かろうと決めた。買い置きしてある入浴剤の、どれを入れようかと考えていると、またお腹がぐうと鳴った。

「…出よ」

入ったばかりの湯船から立ち上がって、タオルを手に取った。

脱衣場に出ると、良い匂いがした。空気を吸い込むと、お腹がまた勢いよく鳴った。

「うぅ…」

最後の力を振り絞って、体を拭き部屋着に着替えた。


「…もう力が出ません…」

リビングまで体を引きずるようにして行くと、食卓の上にはご飯の支度がしてあった。
生姜焼きにキャベツの千切りと、昨日私が作った切り干し大根の煮物も用意してあった。

「ごはんとお味噌汁!」

そして!

「あれ!?カップ麺がある!?」

「腹減った」

「夕ご飯はどうしたんですか?」

「泉が帰ってくるまえに食っちまたから。…泉も少し食うだろ?」

カップ麺にお湯を注ぎながら焦凍さんが答えた。

さりげなく私のしたいことを叶えてくれる。なんて優しい人なんだ。きゅーん、と心臓が締め付けられた。愛おしさで死んでしまう。

「好きです」

「…知ってる」

焦凍さんがいつものそうか、という返事ではなく、知ってると答えるのはとても機嫌のいい時だ。
私は嬉しくなって、もう一度大好きですよと言ってみた。

コンロにやかんを置いた焦凍さんがため息を吐いた。言いすぎたかな…と反省していると、振り返った焦凍さんが呆れた顔をしていた。

「…お前、ご飯食べたくないのか?」

その言葉にかぁーっと身体中が熱くなっていく。

「た、食べたいです!」

慌てて食卓に付いて、手を合わせた。

「いただきます!」

呆れたように笑いながら、焦凍さんが私の目の前に座った。頬杖をついて私が食べているのをじっと見つめている。恥ずかしいが、生姜焼きは美味しい。よく噛んで飲み込んでから、感想を述べた。

「美味しいです!」

「良かった」




2021.12.07


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