ラブ&ヒーロー

□お誘い
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「…焦凍さん」

私は出勤するために準備を整えて、寝ていた夫に声をかけた。

「…ん?」

焦凍さんは返事はしたものの、瞼を閉じたままだ。

「…起こしてしまってごめんなさい」

「休みだし…大丈夫だ」

眠たそうにボソボソと返事をした。私は深呼吸をして、口を開いた。

「あの今夜なんですけど…明日お休みなので…その、夜どうでしょうか…」

頑張って最後まで言うと、焦凍さんはうっすらと目を開けた。

「…待ってる」

焦凍さんが笑うので、私は噴火しそうだった。

「わ、あ、じゃ、仕事…行ってきます…」

挙動不審になる私を焦凍さんはくすくす笑った。

「泉から言ったくせに」

焦凍さんは私の腕を掴むと起き上がった。

「待て」

まだ眠たそうな顔で私にキスをしてくれた。

「気をつけてな」

顔に熱が集まる。今の私は真っ赤なトマトみたいだと思う。熱い。

「…何固まってんだ」

焦凍さんはやっぱり可笑しそうに笑う。

「誘ったのはお前だろ」

恥ずかしくて口を開けずにいると、焦凍さんは再びキスをした。何度もキスをしてくれるので、私は何も考えられなくなっていく。このまま、溺れてしまいたいと思っていると、焦凍さんが上着の中に手を入れようとしてきたので、流石に驚いて両手で強く押して離れた。

「まだっ…朝、です…っ!私、これから仕事なんですから…!」

焦凍さんは面白そうににやりと笑った。

「そんな赤い顔して、説得力ねぇな」

「もう!仕事行きます!」

立ち上がると、焦凍さんが再び手を掴んだ。どうするのかと見ていると、自分の元に引き寄せて、指先にキスをした。自分がお姫さまにでもなった気分だ。

「気をつけて頑張れよ。待ってる」

その姿にまた全身が熱くなる。反対の手で顔を押さえた。

「…んん゛っ…すき…」

「そうか」

焦凍さんは楽しそうだ。








「ただいま帰りました」

運悪く今日は夕方のパトロールで、派手に暴れ回っていたヴィランの捕獲をしていたため、帰りが遅くなった。
疲れ切って弱々しく家の中に呼びかけると、焦凍さんが出迎えてくれた。

「…焦凍さんだ…」

全身から緊張が解けて力が抜けた。

「おかえり」

前に倒れ込むと、焦凍さんが抱き止めてくれた。逞しい筋肉だ、なんて思った。

「ニュース見た。疲れただろ。先風呂入るか?ご飯食べるか?」

優しく問いかけてくれる焦凍さんに、私は首を振って答えた。

「泉」

呼ばれて顔を上げるとキスをされた。優しいキスをたくさん。疲れているせいか、判断が鈍っていてされるがままだった。何度かキスをした後、焦凍さんは唇を離した。
離れたくない。お風呂に入って汗を流したいのに。お腹がぐるぐる鳴るくらい、空腹なのに。今はただ焦凍さんが欲しくてたまらなかった。焦凍さんのシャツを掴んでじっと見上げた。

「焦凍さんが先じゃだめですか?」

焦凍さんは深くため息をつくと、答えるように私を抱きかかえた。私は焦凍さんにしがみつき、嬉しくなって頬にキスをした。

「…どうなってもしらねぇぞ」

「明日お休みですもん」

「お前はな」

「妻が可愛くおねだりしてるんですよ…?」

「……」

焦凍さんはまたため息をついた。




今晩の目的を達成してからうとうとしていると、お腹がきゅるきゅる鳴り出した。

「夕飯、食べるか?」

隣で寝ていた焦凍さんが口を開いた。

「…あのぅ…大変心苦しいのですが、カップ麺が食べたいです」

「なんで心苦しいんだ?」

「だって焦凍さんが用意してくれたご飯あるじゃないですか…」

「明日食べればいいだろ。今日は疲れてんだから、自分の好きなようにしたらいい」

「ありがとうございます!」

「ちなみに今日は何を作ったんですか…?」

「生姜焼き」

「生姜焼き…!」

「疲れてんだろうと思って」

「やっぱりそっち食べます!急いでお風呂入ってきます」

「俺も行く」

「だ、ダメです!」

「なんでだ」

「焦凍さんが一緒だと、お風呂どころじゃなくなっちゃうじゃないですか!」

「…いいだろ、別に。俺だって腹が減ってんだ」

「私じゃお腹は満たされませんけれども!」





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何が書きたかったんでしょうね、私は…。

2020.08.29
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