おおきく振りかぶって
□甘い50分
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なんかわかんないけど
お前がスキ
お前だけが、スキ。
【甘い50分】
現在授業中
科目は数学
俺の得意分野
黒板とノートを何回も交互に見てると
セーターを引っ張られる感覚
この引っ張りかたは…
「あーべ〜!」
空気にも似た声で俺を呼ぶ声
これで確か三度目
「なんだよ今度は」
後ろを向きながら眉間にしわをよせて言う
「この問3の問題がよくわかんないんだよ〜教えて?」
「ちょっとは自分で考えろよ」
はあ、とため息をついて体ごと向かい合うようにする
「あのな、これはこの公式使って代入すんだよ、そうすればここの速さが出る…」
ふと見上げると
俺を見つめる笑顔のお前
「…やる気あんのか」
「え？あるよお、阿部が教えてくれてんだもん」
「じゃあへらへら笑ってねえでしっかりノート見ろ」
「あいあい」
くそ、調子狂うなあ…
コイツといるときはいつもそうだ
あ、てか
「お前って数学得意じゃなかったっけ？」
「え？何の話？」
「とぼけてんじゃねえ!お前他の教科ダメダメでも
数学だけはいつもいい点取ってるじゃねーか!!」
「そんなことないよっ!」
「嘘つくな!!こんな問題１人でも解けるくせして、俺に教えてもらってんじゃねえ!」
いちいち後ろむくの面倒なんだよ!
「阿部、どうした？うるさいぞ」
「……すんません」
なんで怒られなきゃいけねえんだよ俺が
意味わかんねえ!
気持ちを無理やり切り替えてノートを取る
「あーべえ!」
「…………」
「あべえ!」
「…………」
「あーべさーん？」
「…………」
「たーかーやさ「うるせー!!!」
あーもうなんなんだよ!
後ろ向けばいんだろ
お前と話をすれば気がすむんだろ
ならしてやるよ!!
このクソレフト!!!
「?!ん」
「阿部にあげるよ!」
口にチョコの味が広がる