□ただ漠然に恋の病
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俺は先輩たちの中でも特に頭が弱いから、冗談なんてとてもじゃ無いけど好きになれないんです。だからエイプリルフールって嫌い。勇気を出して好きって言っても、嘘で済まされて、それからもあの日の事は無かったみたいにされてしまうのが、すごい怖い。皆その日以外にも嘘ついてるのに「この日は特別」だなんて、馬鹿な俺より馬鹿みたいに見えちゃって俺は掃除用具入れを思いっきり蹴飛ばした。




「赤也ーちょっと来て!」

「丸井先輩今授業中っすよ」

「いや、お前もだろ不良中学生。やりたい事があるから屋上に行こう」

「え、つまんなそうだし、めんどくさいから嫌」

「えー、ダメ」




話が終わらないうちに手首を掴んで、屋上まで強制的に連れて行こうとする先輩に途中の階段で「やっぱ帰っていい?」って言ったら嫌だって言われた。

めんどくさがり屋の丸井先輩がなんで?訳も分からず引っ張られる手を見ながら、俺は今日何か悪い事でもしたのか思い返した。まさか俺が丸井先輩のたたんであるユニフォームを広げてちっせー、とか言ってたのばれたのかな。やばいやばい、殺される!
お願い神様、俺死ぬなら溺死とかアイスの食べ過ぎとかが良いんです!ましてや好きな人に殺されるなんて絶対にあっちゃいけないと思うんですよ。ねえ、聞いてます?




「今からエイプリルフールの予行練習しようと思って呼んだんだけど、」


「…そうゆー下らないことは俺じゃ無くてジャッカル先輩とかにしてくださいよ。」


「俺さ、お前が入学した時から好きだったんだよね、ていうか生まれる前から好きだったの」


「は?嘘でしょ…」

「うん、本当に決まってんじゃん。」




真顔で俺を見つめる丸くて綺麗な目玉が嘘をついてるって信じられなかった。先輩から好きだって言われたこと無くて、ドキドキしてく心臓にストッパーかけられなくなっていく自分も信じられなくて、一本の綱から落ちてしまいそうな気分になった。




「言ってる意味が分かんない。やっぱり先輩はさ、俺から愛されてる先輩の方が可愛いと思うんだよ」


「うん」

「だから先輩が俺に好きって言っちゃだめだめ。」

「だったら、お前になんて言えば良いの?」

「…好き」

















(それ変わんないじゃん!)

ただ漠然に恋の病

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