□何も聞こえなかった
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俺が10歳の時のやってはいけないと散々言われてた事だった。校長先生ごめんなさい、中庭にあった池に石を投げたのは俺で、しかも泳いでいた金魚に当てて殺してしまったのも俺、とっさに指をさして違う子に押しつけてしまったのも。保健室のベッドで勝手に昼寝したり体重計の上で飛び跳ねて壊してしまったのも全部自分。ただ、どんなにおこられてもバケツを持たされても、顔色一つ変えなかったのは俺に心が無かったからだ。今はそんなの微塵も感じさせないくらい感情的に育った訳で。




「仁王は感情が薄い気がする」


「嘘、だぁ」

「 ば れ た 」



仁王は口を細く開けて小さく喋った、聞き取れないと思ったけど俺にはわかる、少しだけ。期末テストの試験中にふと小学生の記憶を引きずり出してみたけど、やっぱり何も残らない記憶だった。そして彼は感情的なのか?と疑った俺は少し離れた仁王の所に話しかけた。それを黒板辺りで見ていた先生は注意した。




「今度保健室にお昼寝しにいこう」

「 雨 の日に」

「約束だからね」



テスト中に話しするんじゃありません、丸井君は進路指導室で試験を受けなさい。皆はそのままテストを続けて。

なーんて新任の女の先生は俺を叱り付けた。喋らないと死んじゃうの、俺うさぎさんだから。方を掴まれて席を立つ。筆記用具を片手に持ちゆっくりと歩き始めて教室から出ようとした時
「ああ、そうだ。小学校の窓ガラスを割った時俺は1回泣いた事がある」
ぽつりと発言した言葉は誰にも聞こえて無いはずだった





「…ブン太も泣いた事あるんじゃの」
と後ろから聞こえたのは紛れも無い事実。
















地獄耳。

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