愛唄

□隣りでずっと
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「ボス!雪の守護者様が…ッ!!」

消えそうになる意識の中で、一番信頼している私の部下の緊迫した声が響いた。
お願い、やめて。
ボスを呼びになんかいかないで。
こんな姿を見られてしまったら、きっと私は消えてしまう。
感情が、心が、私のもっている全てのものが塵になって消えてしまう。
それでも、私の声は届かない。

「どうして、君がッ!!」

荒々しく扉が悲鳴を上げて、その後すぐに聞こえたのは君の悲鳴のような声で。
どうして君が来てしまったの?(君はここには来てはいけなかったの、だから私を見ないで。)
どうして君はここにいるの?(君は私を見てはいけなかったの、だから私を消して。)
どうして私の身体は動かないの?(この身体が動いたのなら、今すぐ君を見て笑うのに。)
どうして私の声は出てくれないの?(この声が出るのなら、今すぐ君を見て「大丈夫」と言うのに。)
ねぇ、どうして?どうしてそんな声をだすの?(今にも泣き出しそうな、そんな声。)
どうして、どうして、どうして、どうして?
止まる事の無い疑問符は、私の心の中を支配して離さない。(こんな悪夢を見るのなら、今すぐ起きて私の身体。)

「ねぇ、目を開けて…。お願いだから、俺を見て…ッ!」

嗚呼、それでも夢ならこのまま覚めないで。だってだって、ずっと望んでいた言葉が聞こえるから。




隣りでずっと
(笑っている君を想い、描く)



20081129
愛唄で20のお題14。
夢の中の住人になる。


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