『影踏み』さんの小説
□西日
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図書館からの帰り道、西日がとても眩しかった。
お昼過ぎに待ち合わせて、一緒に調べ物をする約束をした。
私よりも先に真之介くんは、図書館の前に来ていた。
風に揺れる木の葉の間から、瞬くような太陽の光をキラキラと浴びながら。
彼は私に気が付くと、やさしく微笑みながら言った。
「ここの動物は、みんな小さいんだな…。」
木々の枝から飛び立つ小鳥を見ながら、呟くように。
そんな姿がなんだか無償に可笑しくて、
「あの森が特別なのよ。」
と、少し茶化すように言いながら、私たちは図書館へと入って行った。
数時間、まじめに調べ物をし、数時間、珍しい本を見つけては、
声を殺しながら、ケラケラとふざけて笑いあった。
とても穏やかな時間は、あっという間に過ぎていった。
「そろそろ日も暮れるな…。家まで送ろう。」
私たちは図書館を後に、家路へと歩き始めた。
日は落ち始め、他愛も無い話をしながら、私たちの向かう方向からは、キラキラと金色に輝く西日が眩し過ぎる程照らしていた。
「……眩しい。」
ふと呟くと、彼は突然すぐ私の前を、私と向かい合うような体制で歩き始めた。
「後ろ向きで歩いてたら、危ないわ。」
「でも、これだったら、眩しくないだろ?」
まともに目を開けていられない程、私の全身に飛び込んで来ていた光は、
少し微笑んで答える彼の後ろから、まるで彼が放っているかのように、やさしい光へと変わった。
「…どうかな。」
「まだ眩しい?」
「そうじゃないよ…。」
「?」
眩し過ぎる程の光を放つ、沈み行く太陽が、私の中に昇りゆく、やさしい光を教えてくれたようだった。
━fin