『影踏み』さんの小説

□罪と罰 中編2
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家に着いたのは、8時少し前。


家族は皆、それぞれの用事で出かけており、


今夜この家には、私と乱馬の2人だけだ。


唯一、今夜この家で共に過ごすはずの乱馬も、


バスケ部の助っ人で、帰りは9時過ぎると言っていた。





夕食は、さっき真之介くんと済ませてきたし、


乱馬には玄関は閉めると言ってある。


のんびりとお風呂にでも入って、


あとは部屋で過ごそう…。








湯船に浸かりながら私は、


先程の真之介くんとのコトを思い返していた。





やさしくも熱いくちづけに、


体中の力が奪われ、倒れそうになる私を、


彼の厚くたくましい腕は、しっかりと抱き止めてくれていた…。


絡まり合っていた舌を、唇から首筋へと降下させ、


首元に、この情事の証を刻みこんだ…。





思い返すだけで鼓動は高鳴り、


あのゾクゾクとした感覚がよみがえり、


カラダの芯が熱くなるのを感じた…。





浴室の鏡に映る、首筋の赤い刻印が、


あの感覚を忘れさせてくれない…。





もう一度思い出したくて、


そっと目を閉じた瞬間━━━。






ガラガラッ!



「ただいまー。」










乱馬だ…!









その声で我に返り、重大なコトに気付く。








こんなもの……乱馬に見られたら━━━!!







髪を拭いていたタオルを、


首から垂らし“跡”を隠すと、


パジャマを慌てて羽織り、


風呂場のドアを開いた。






━と、そこには乱馬が立ちはだかっていた。





「よぅ。風呂入ってたのか。」





心臓が止まるかと思った。





「ぇ、ええ。空いたからどうぞ。


私はもう寝るわ。おやす━━━。」





「待てよ。」





横を早足で通り過ぎようとした瞬間、


凄い力で腕を掴まれた。





「ィタイッ!何す━━━。」





言い終わる間もなく、


乱馬は私の首元のタオルを取りあげた。





「………何だ、コレは。」





パジャマの襟を掴み開き、


首筋に赤い跡をつけた私に、


冷静さを失った目つきで詰め寄ってきた。





「誰につけられた?!」


「誰でもないわっ!!


 虫に刺されただけよっ!!」





必死で乱馬の腕を払おうとするも、


もの凄い力で、到底振り払えるわけもない。





「━真之介か?」


「━━━━!!」





乱馬の言葉に、


思わずカラダをビクッとさせてしまった。





「真之介か!!」





怒鳴りつけたかと思うと、


抵抗する私を、力ずくで乱馬の居候部屋


へと引きずり込み、


敷きっぱなしの布団の上に組み敷いた。








━罪と罰(中編2)fin

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